2009年3月期の大赤字から一転、大規模構造改革により財務内容を劇的に改善させたTOTO。海外事業もおおむね好調で18年3月期の創業100周年に向けて着実に歩を進めるが、むろん死角もある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

「派手なイメージ訴求により、話題づくりに余念がないLIXILグループの“挑発”には乗らない」

 あるTOTOの幹部は、こう言い切る。海外M&Aで規模の拡大を目指すLIXILとは異なり、TOTOには固有の技術力を基に着実な成長を遂げる専門メーカーとしての“自負”があるからだ。

 確かにTOTOは、成長という点ではLIXILの後塵を拝してきたのは事実で、株式市場からも再三再四、「海外展開が遅いのでは?」という指摘を受けてきた。だが、そのLIXILはここ数年、一度も中期経営計画を達成できていない上に、買収した中国子会社の不正会計問題で大揺れに揺れ、トップの交代劇にまで発展した。

 片や、TOTOは、創業100周年を迎える2018年3月期に向けて策定した長期の経営計画が、おおむね順調に進んでいる。

 まず、消費増税前の駆け込み需要があった14年3月期は、売上高、営業利益、経常利益、純利益が過去最高だった。株式や不動産の売却益を除いた水準でも、純利益は前期の約2.6倍となっている。

 その反動が懸念された15年3月期は、売上高は1.6%減の5445億円にとどまったものの、影響が予想以上に長引き、国内住設事業の利益が低下した(図(1))。一方で、海外住設事業は、円安の影響もあって伸長し、国内の落ち込み分をカバーした格好だ。

 振り返ってみれば、09年3月期には、新設住宅着工件数の低迷や円高などによって262億円の赤字に転落した。その後、大規模構造改革を進めながら、もとより注力していたリフォーム事業を再び強化し、業績を急回復させた。

 例えば、10年3月期の営業利益率は1.6%だったが、16年3月期の予想では7.3%になる見込みだ(図(2))。一方で、LIXILの営業利益率は、TOTOの半分以下の3.1%にすぎない(15年3月期の実績ベース)。稼ぐ力では、地味なTOTOが、派手なLIXILを大きく上回る。