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ビッグバン・イノベーション
【第3回】 2016年3月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
ラリー・ダウンズ,ポール・F・ヌーネス,江口泰子

ファミコンからWiiUまで
なぜ任天堂は「共食い」覚悟で新商品を投入しつづけたのか

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シャープが選択を誤り、エアビーアンドビー(Airbnb)が追い詰められた「ビッグバン・イノベーション」の第2ステージ「ビッグバン」――爆発的成長(とその後にくる急激な市場の飽和)――には、さらにやっかいな特徴がある。
実はその特徴こそが、任天堂が矢継ぎ早に、それも「共食い」を覚悟してゲーム機を投入しなければならなかった理由にほかならない。『ビッグバン・イノベーション』の著者2人が語る、いち早くビッグバン・イノベーションにさらされたゲーム業界に学ぶ、「生き残り」のためのあまりに過酷な条件とは。

任天堂が成し遂げた
「6連続」のイノベーション

 驚くこともないだろうが、破壊的イノベーションを生み出す豊かな“原始のスープ”のなかでは、新世代の家庭用ゲーム機を次々に投入するゲーム機メーカーが破滅的なダメージを与えるのは、競合他社のゲーム機以上に、自社の現行製品に対してだ。

 図は、任天堂がこれまでに投入してきたビッグバン・イノベーションである。1982年から2012年までの30年間、たったひとつの企業が、これほど多くの破壊的製品を連続して投入してきたのである

6世代続いた任天堂のビッグバン・イノベーション

 新世代のゲーム機が発売されると、現行製品の市場が崩壊する現象、すなわちビッグクランチが起きる点に注目してほしい。自社製品を破滅に陥れているのは、他でもない任天堂自身のように見える。このような共食い現象は、以前なら「販売計画上の失策」として大きな非難を浴びたに違いない。ところが、指数関数的技術の世界では共食い現象が不可避であることは、任天堂だけでなく、どの家電メーカーも承知している。新製品が爆発的な売れ行きを示したら、大急ぎで次世代の投入に取りかからなければならない──さもなければ、競合に先を越されてしまうからだ

 どのゲーム機も事実上、次世代の市場実験の役割を担い、さらに大きな特異点を築く。新世代が爆発的に売れて破壊的製品になると、ひとり勝ち現象が生じ、自社の現行製品を駆逐する。

 市場飽和が起きるスピードは加速し、急激なビッグバンの後には、同じように急激なビッグクランチが続く。やがてエントロピーのステージに入って、ブームに乗り遅れた消費者が旧世代の製品を買おうとしたときには、かつての革新的な技術は、さらに進化を遂げた次の指数関数的技術のなかに引き継がれてしまっている。(『ビッグバン・イノベーション』120-121ページより抜粋)

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    ラリー・ダウンズ(Larry Downes)

    シリコンバレー在住のコンサルタント。それまでの市場を破壊するような技術が登場した際、それがビジネスや政策にどう影響を与えるのか、過去30年にわたりコンサルティング、講演、執筆している。特にインターネットに関するテクノロジーに強い。 アーサーアンダーセン、マッキンゼーなどのコンサルティング会社を渡り歩き、現在はアクセンチュアのフェロー(ハイパフォーマンス研究所)。突如起こった技術革新により、産業構造がどう変わっていくのか、長期的な観点から研究している。ウォールストリート・ジャーナルやブルームバーグ、フォーブス、エコノミストなど、数多くの雑誌に寄稿しており、そのうちForbes.comでの記事は累計350万PVを誇る人気に。著書に、“The Laws of Disruption”(未邦訳)。

    ポール・F・ヌーネス(Paul F. Nunes)

    アクセンチュアのハイパフォーマンス研究所で、リサーチ担当グローバル・マネージング・ディレクターを務めている。1986年以来アクセンチュア一筋のマーケティングのプロで、ITの進化をビジネスに活かし、予測に役立てるという目的のもとに、ハイパフォーマンス研究所設立に動き、分析を続けている。その研究成果は数々のメディアでも紹介され、また、賞も受賞している。共著に、“Jumping the S-Curve”(未邦訳)。

    江口泰子(えぐち・たいこ)

    法政大学法学部卒業。編集事務所、広告企画会社を経て翻訳業に従事。主な訳書に『道端の経営学』(ヴィレッジブックス)、『ビッグバン・イノベーション』『考えてるつもり』(ともにダイヤモンド社)、『使用人たちが見たホワイトハウス』(光文社)、『ケネディ暗殺 50年目の真実』『21世紀の脳科学』(ともに講談社)、『マイレージ、マイライフ』(小学館)、共訳に『真珠湾からバグダッドへ』(幻冬舎)など。


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