佐々木圭一氏の著書で、シリーズ85万部突破のベストセラー『伝え方が9割』が、「ビジネス書ランキング」で2013年より史上初・3年連続ベスト10入りを果たした(トーハンビジネス書部門調べ)。本書のプロデューサーであり、レバレッジシリーズで知られる本田直之氏との対談が、約3年ぶりに実現。今回は、『伝え方が9割』がここまで支持された理由や今後の展開について、語っていただきました。(構成・伊藤理子 撮影・小原孝博)

「できない人」が試行錯誤したからこそのリアリティが再現性を生む

『伝え方が9割』が支持された理由は<br />「再現性の高さ」。<br />『伝え方が9割』は、学校の授業に<br />組み入れるべき本田直之 (ほんだ・なおゆき)レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ユニオンゲートグループ取締役、Aloha Table取締役、エポック取締役、コーポレート・アドバイザーズ取締役、米国Global Vision Technology社取締役、東京レストランツファクトリー顧問、アスロニア顧問などを兼務。ハワイ、東京に拠点を構え、年の半分をハワイ、3カ月を日本、2カ月をヨーロッパ、1カ月をオセアニア・アジア等の国を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまで訪れた国は50カ国を超える。著書に「レバレッジシリーズ」をはじめ、『脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住』『ノマドライフ 好きな場所に住んで自由に働くために、やっておくべきこと』、『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』等があり、著書累計250万部を突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)、明治大学商学部産業経営学科卒、(一社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー、アカデミー・デュ・ヴァン講師、明治大学・上智大学非常勤講師。

本田『伝え方が9割』の3年連続ビジネス書ベスト10入り、おめでとう。

佐々木 ありがとうございます。直さん(本田さん)のおかげで独立できたし、社員を採用できるようにもなりました。

本田 ずいぶん儲かってるじゃない!

佐々木 そんなことないです!…前回対談いただいたのがちょうど3年前で、その時に「この本は絶対売れるよ」と直さんに言っていただいたのを覚えています。その時、すごい部数を予測されてびっくりしました。当時は、5万部が大きな目標でしたから。

本田 だいぶ適当に言ったからね、俺(笑)。今何万部だっけ?

佐々木 ありがたいことに、(1)(2)合わせて、シリーズで85万部です。

本田 本が売れない時代に、すごいことだよね。まだ本が売れまくっていて、100万部クラスのベストセラーがバンバン出ていた時代だったら、800万部ぐらい売れているんじゃないの?

佐々木 (笑)。『伝え方が9割』は初めての著書なので、「売れているよ」と言われてもまだピンと来ないし、「何で売れているの?」と言われるとさらによくわからないんですよね。「今の世の中、“伝え方”っていうのがちょっとブームなんじゃないですかね?」などと返しているのですが…直さん的にはどう思いますか?

本田 俺は単なるブームではないと思うよ。伝え方って言うのは、常にみんな必要としているけれど、今まで適切な本がなかった。一方でこの本には、シンプルな公式がある。本を読んだ人が簡単に実践できる。これがすごいと思うんだよね。

佐々木 なるほど。

本田 「読み終わったけれど…結局これってどうすればいいの?」という読後感の本って、もう売れないと思う。でも、この本は「なるほど、理解できた。そしてこうすればいいんだ」と実行方法まで指南してくれる。そしてそれがシンプルでわかりやすい。これが一番大きな理由じゃないかな。加えて、圭一の肩書は「コピーライター」であり、伝え方が得意そうな人に見えるのに、全然そうじゃなかったという点も共感を集めていると思う。

佐々木 得意じゃないからこそ、ああでもない、こうでもないと試行錯誤して、公式を作ったんです。

本田 コピーライターみたいなクリエイターって、世の中の人って「もともと天才だった人がなるもんだ」と思っているからさ。そんな人に何か含蓄のあることを言われても、「あなただからできたんでしょ?」なんて言われる。でもこの本を読んだら、圭一は意外にダメダメだったと(笑)。そして、「伝え方の公式を作らないと、いいものが作れない!」という危機感のもとに試行錯誤したからこそ、生み出した公式がリアルだし、いろいろな人の役に立てているんだよね。…ほら、天才は指導者になれないって言うじゃない?長嶋茂雄さんにコーチを受けても、「こうボールが来たら、こう打てばいいんだよ」で終わっちゃう、みたいな。圭一はその逆なんだよ。

佐々木 わかります。浅田真央ちゃんがインタビュアーに「どうやったらあのジャンプが飛べるんですか?」と聞かれたときに、「ひょいって飛ぶんです」って答えていましたが、リアルにそうなんだろうなって。天才は、「ひょいって飛ぼう」と思って、本当に飛ぶんですよね。でも僕はひょいっと飛ぶことは出来なくて、すごく苦しみもがいて…。でも、目の前の仕事に愚直なまでに取り組む中で、伝わる言葉の類似性に気付き、公式を作り出すことができたんです。

本田 自分が苦労してやったからこそ、共感も得られるし、他の人の役にも立つものが生み出せるんだよね。俺、自分の本にもよく書いているんだけれど、「再現性のないものって役に立たない」って思っている。たまたま運よくできた成功や、天才が手掛けたからこその成功って、再現性がないし、量産もできない。何でこれがうまくいったのか?というロジックがちゃんとあれば、それを真似すれば第三者でも再現できる。

佐々木 この前、僕の本を読んだ人から、「もう僕はこの本についての講演ができます」と言われて、ちょっと嬉しかったんですよね。講演ができるということは、彼がこの本の内容を「完全に身につけた」ということ。彼がそう思ってくれるほどのレベルまで伝えることができたんだ、と思って。相当読み込んで、自分のものにしてくれたんだと思うし。

本田 まあ、できないと思うけどね(笑)。

佐々木 そうですか?(苦笑)

本田 自分で「実践」していないんだから、教えるのは無理だよ。圭一は公式を作って、実践して、さらにそれによる蓄積を得ているから、教えることができるんだよ。…でも、読み手にそう思わせるぐらいの、完成度の高い本だと思うよ。これを読めば、自分も人に教えることができそうだって思わせる「再現性の高さ」であり、それが「支持されている理由」だとも思う。