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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

全人代での要人発言から「次の中国」が見えてきた?

加藤嘉一
【第72回】 2016年3月15日
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毎年恒例の全人代で
筆者のアンテナが感じ取ったもの

今年も中国で開催されている全人代。要人たちの言動から「次の中国」のい姿を読み解こう

 今年もまた、北京が1年に一度の政治の季節を迎えた。“両会”(全国人民代表大会&全国政治協商会議)である。日本では「全人代」と呼ばれることが多い、あの政治会議である。

 国務院首相、全国人民代表大会委員長、全国政治協商会議主席、最高人民法院院長など、党・政府の各部門の首長が過去の1年を振り返り、これからの1年の目標を提起する。また国務院における各部署(日本の省庁に相当)の首長が記者会見を開き、より具体的に政策を説明する。全国各地の自治体が人民大会堂で会議を主催し、そこに習近平総書記、李克強首相らが飛び入り参加し、メディア記者たちも質問を投げかける。全国人民代表大会代表や全国政治協商会議委員には、社会的に著名な文化・スポーツ人、学者などもの民間人も含まれる。前提は、共産党が領導する社会主義政治に“忠実”であることだ。

 あらゆる数字や情報が集中的に錯綜する“両会”。中国政治・経済・社会に対する継続的観察にとっては有益なプラットフォームであることは疑いない。2016年の経済成長率目標6.5%~7.0%や2016年度国防予算伸び率7.6%といった数字の多くはすでに日本でも報道されていると察するため、本稿ではあえて触れないことにする。本稿では、私が“両会”を眺める過程で印象深く映り、中国民主化研究をめぐる思考のアンテナに引っかかった「3+2+1」の場面をケーススタディとしてお届けすることにする。
  
 まずは「習近平政権下における高級官僚たちの言動スタイル・パターン」をめぐる物語である。ここでは3つのケースを紹介したい。

(1)全国人民代表大会・傅瑩報道官の「人権弁護士」に関する発言

 3月4日、開会に先立って記者会見を行った同報道官は「“人権弁護士”が逮捕されている状況をどう見るか?」という質問に対して次のように答えた。

 「“人権弁護士”という呼び方に関して、私は多くの人がこのように呼ぶことに賛同していないように思える。我が国の弁護士に対して政治的線引きをしているように聞こえる。弁護士はまず法律を守る模範であるべきで、我が国の弁護士をめぐる規定に則るべきである。彼らは憲法を守り、法律を守るべきである。仮に弁護士が法律を知りながらそれに違反した場合は、法律による処罰を受けなければならない」

 1つの実例として、昨年12月、“人権弁護士”の浦志強氏がソーシャルメディアに書き込んだ内容が「民族の恨みを扇動した罪」などに問われ、懲役3年、執行猶予3年の判決を受けているが、傅瑩報道官は浦氏を含めた人権弁護士が“違法行為”をしたと言いたいのだろう。
  
(2)教育部・袁貴仁部長の「西側教材不適切論」に関する発言

 米ウォール・ストリート・ジャーナルの記者が同部長に次のように聞いた。

 「あなたは以前西側の価値観に基づく教材は教室に適さないとおっしゃいましたが、説明をお願いします。“西側の価値観”とは何を指すのですか。マルクス主義は本来西側の概念ですよね。教育部がこれら西側の価値観に基づいた教材をどのように処理していくのかについても教えてください」

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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