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ビッグバン・イノベーション
【第5回】 2016年3月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
ラリー・ダウンズ,ポール・F・ヌーネス,江口泰子

富士フイルムが勇敢にも飲み込み、
コダックが飲めなかった「劇薬」の正体

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成長期はとうに過ぎ、後はゆるやかに衰退していくのみ――。
安定期と衰退期の端境期にあり、何か手を打たないといけないと感じつつも、「過去の遺産」にがんじがらめになっている企業は多いのではないだろうか。過去の遺産とは、たとえばシャープの回で見たような爆発的成長期に行った巨額の投資や、熱心すぎていつまでもアフターケアを求める「ロイヤルティ(忠誠心)」の高すぎる顧客(レガシーカスタマー)が挙げられる。
まさに過去の成功によって撤退すら不可能になってしまう『ビッグバン・イノベーション』第4ステージ「エントロピー」だが、どうすればその「地獄」から脱出できるのか。コダックと富士フイルムという、ともにデジタル化で苦境に立たされた企業の運命を分けたある「劇薬」に、その答えはあった。

みずから「貸借対照表」の解体に着手せよ

 エントロピーに陥ると、脱出速度に達するのは至難の業である。脱出を妨げるのはレガシーカスタマーかもしれない。レガシーレギュレーター(規制当局)の場合もあるだろう。彼らは純粋に既存企業を支援しているつもりかもしれないが、廃れた技術のインフラやサプライチェーンを維持するように促したり、実際にそう要求したりして、企業をさらに深いブラックホールの奥へと引きずり込む。顧客が減って、規模の不経済が働くと、よりよく、より安い破壊的製品やサービスと戦うことはますます困難になる。

 このステージを生き延びるためには、少なくとも立て直しが不可能な事業分野を諦め、その空白を受け入れることだ。そして製品の生産を打ち切る。保証サービスや年金給付などの義務もできるだけ早く終わらせる。価値を失った知的財産を手放すことも重要だ。

 つまり、既存企業がコントロールできない外部の力が働く前に、みずから貸借対照表の解体に着手する。そして手元に残った資産を、他の産業かエコシステムで活用する方法を探し出す。(『ビッグバン・イノベーション』295-296ページ)

 いやはや、みずから「貸借対照表」を解体し、再構築せよとは、なんとも厳しい選択肢、まさに「劇薬」である。しかし、その劇薬を飲み干し、みずから解体することに成功した企業は存在する。それは、日本の精密化学メーカー、富士フイルムである。

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ラリー・ダウンズ(Larry Downes)

シリコンバレー在住のコンサルタント。それまでの市場を破壊するような技術が登場した際、それがビジネスや政策にどう影響を与えるのか、過去30年にわたりコンサルティング、講演、執筆している。特にインターネットに関するテクノロジーに強い。 アーサーアンダーセン、マッキンゼーなどのコンサルティング会社を渡り歩き、現在はアクセンチュアのフェロー(ハイパフォーマンス研究所)。突如起こった技術革新により、産業構造がどう変わっていくのか、長期的な観点から研究している。ウォールストリート・ジャーナルやブルームバーグ、フォーブス、エコノミストなど、数多くの雑誌に寄稿しており、そのうちForbes.comでの記事は累計350万PVを誇る人気に。著書に、“The Laws of Disruption”(未邦訳)。

ポール・F・ヌーネス(Paul F. Nunes)

アクセンチュアのハイパフォーマンス研究所で、リサーチ担当グローバル・マネージング・ディレクターを務めている。1986年以来アクセンチュア一筋のマーケティングのプロで、ITの進化をビジネスに活かし、予測に役立てるという目的のもとに、ハイパフォーマンス研究所設立に動き、分析を続けている。その研究成果は数々のメディアでも紹介され、また、賞も受賞している。共著に、“Jumping the S-Curve”(未邦訳)。

江口泰子(えぐち・たいこ)

法政大学法学部卒業。編集事務所、広告企画会社を経て翻訳業に従事。主な訳書に『道端の経営学』(ヴィレッジブックス)、『21世紀の脳科学』『ケネディ暗殺 50年目の真実』『毒になる母』(ともに講談社)、『考えてるつもり』(ダイヤモンド社)、『マイレージ、マイライフ』(小学館)、共訳に『真珠湾からバグダッドへ』(幻冬舎)など。
 


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