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「引きこもり」するオトナたち

TVタックルひきこもり問題、
当事者が本当にほしい支援、親に必要な支援とは

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第258回】 2016年4月7日
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引きこもる中高年を暴力で外に連れ出しても、問題の解決にはならない
※写真はイメージです

 テレビ朝日『TVタックル』が放映した「大人のひきこもり」特集の番組のつくり方には問題があるとして、4月4日、5人の引きこもり経験者や精神科医の斎藤環氏ら専門家と一緒に記者会見を開催した。これには大きな反響が寄せられた。

 番組内では、高齢の両親からの依頼を受けた「ワンステップスクール伊藤学校」の廣岡政幸校長が、自宅に引きこもって暴力を振るう息子(47)の部屋のドアを素手で突き破って怒鳴ったり、連れ出したりするシーンが流れた。記者会見では、そうした報道に対して、人権意識が欠けていると主張。斎藤医師は記者会見後、BPO(放送倫理・番組機構)の放送倫理検証委員会に対して、同番組の放送内容の審議を要請した。

 今回のように、これまで個々につながりのなかった引きこもり当事者たちがリスクを冒し、メディア向けに会見で思いを伝えること自体、初めての出来事だといえる。

 筆者の元にも、会見を開くという情報をツイッター等で知って、全国から数多くのメールやメッセージが届けられた。

 前日たまたま開かれた「引きこもり」というテーマに関心のある多様な人たちが集まる『庵』には、「激励を言いに来た」と、遠くから会いに来てくれた当事者たちもいた。

 そうした公の場には出られない「声なき」当事者たちの気持ちや思いに突き動かされるようにして、筆者も当日の会見に臨んだ。

大きすぎたテレビ番組の影響
「お手本にしようと思った」との声も

 斎藤氏が呼びかけた会見の趣旨は、放送で紹介された支援団体を排除したいというものではない。引きこもっている当事者に「支援者」として接するのであれば、「暴力を用いた」手法ではなく、リスペクトの関係として「尊厳に対する配慮を踏まえた」手法で臨んでもらいたいというのが主張だった。

 しかし、引きこもっている本人を「犯罪者予備軍」であるかのように仕立て、困っている親を「被害者」という構図に落とし込み、部屋のドアを打ち破って大声で威圧する暴力的手法を映像で流し、批判も検証もされないまま放送したテレビ番組の影響は大きかった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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