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高橋洋一の俗論を撃つ!

増税にこだわる財政学者はどこが間違っているのか

高橋洋一 [嘉悦大学教授]
【第142回】 2016年4月7日
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「財政再建のために消費増税待ったなし」は正しいか?

財政学者が増税に固執する
経済学的な背景とは?

 安倍政権は、2017年4月の8%から10%への消費増税を見送るという報道が最近多く出ている。筆者は、このタイミングでの消費増税は景気の腰を折り、財政再建も遠のくので、元も子もないと本コラムでも主張してきたから、安倍政権もまともなことをやるものだという感想しかない。実際、国際金融経済分析会合に呼んだスティグリッツ氏やクルーグマン氏も似たような考え方を述べたようだ。

 ただし、これで落ち着かないのが、日本の財政学者である。彼らは財政再建が待ったなしであるとして、消費増税を主張してきた。彼らにとって消費増税の見送りは、財政再建の先送りとなり、決して許されないことであるという。世間の識者にも、こうした財政学者の意見をそのまま語る、財政再建至上主義者という人たちが多くいる。

 そこで家元である財政学者がどうしてそれほどまでに増税(消費増税)に固執するのか、その経済学的な背景を考えてみたい。

 結論から言おう。財政学者の間で「横断性条件」と呼ばれるものが最も信頼される“錦の御旗”になっている。これは、厳密には数式表現になっているが、その条件が満たされる状態とは、“将来の国債残高がそれほど目立たなくなる”というものだ。厳密な数式表現をあえて感覚的な言葉で言えば、無限先の国債残高はとるに足りない存在になるというわけだ。

 財政学者は、これを将来の国債残高をその後の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字で完全に返済することと経済的に解釈している。こうした財政運営であれば、赤字の増加を放置せず、国債が完済されるという意味で、財政が信頼でき、持続可能であると考えるわけだ。

 そこで財政学者は、増税や歳出削減によって基礎的財政収支の黒字を目指そうとする。

 まず、基礎的財政収支の黒字を目指すにもしても、増税や歳出削減だけではなく、資産売却という方法もある。しかし、財政学者は、“資産売却は永久にはできないから、そのような手は生ぬるい”と思っているようで、無視または過小評価しようとする。どこの国でも、財政が危なくなったら、資産売却は真っ先に考えられる対策であるので、これを考慮の対象外にするのはまずい。これで財政危機を脱せられるケースも少なくないのにだ。

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高橋洋一[嘉悦大学教授]

1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。

 


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