「幸せ食堂」繁盛記
【第二十五回】 2016年4月12日 野地秩嘉

赤羽の喫茶店は、カレーや焼き魚定食を、
モーニングセットで楽しめる

レトロな内装やマンガ雑誌、そして懐かしい味

「友路有」はトゥモローと読む。赤羽に3店(うち1店はランチ専門)、浅草に1店舖ある喫茶店チェーンだ。

「昔ながらの喫茶店」という看板通り、同店の雰囲気は昭和40年代、50年代を彷彿させる。レトロなインテリア、マンガ雑誌が置いてある、タバコを吸う客にやさしい、ナポリタンやミートソースは昔ながらの味がする……。

 赤羽本店の店長、芦澤心哉は言う。

「創業は30年ほど前ですから、それほど昔ではありません。ただ、サービスは昔ながらの喫茶店と言えます。常連さんの名前やいつも注文するものは覚えています。アットホームな店です」

 赤羽本店の開店は朝の5時30分からだ。芦澤は南千住に住んでいるのだが、毎朝、4時に起きる。支度もそこそこに午前4時46分の南千住発の常磐線に飛び乗る。赤羽着は5時08分。駅横にある店にダッシュ。すぐに厨房に入る。

 なんと、開店前から常連客は列を作っている。彼らが入ってきたら、注文を聞き、客席に配って歩く。

「モーニングの人気は朝カレーセット(630円)と焼き魚定食(540円~)。そして、定番のバタートーストセット(540円)でしょうか。ある日、入ってきた方がみなさん、焼き魚定食を注文されたことがありました。ドリンクはお茶。いやあ、喫茶店なんだか和食屋なのか、私もわからなくなりました」

 友路有で出すものはすべて自家製だ。カレーは肉や野菜を切って炒めて、厨房で仕込む。焼き魚も築地から仕入れてきた干物をフライパンで焼く。フライパンで焼いたからといってまずいわけではない。

 わたしはいつもロースターで干物を焼いていたが、アジ、カマス、サンマといった身の薄い干物ならフライパンで両面焼けば十分だと感じた。

 焼き魚定食の種類は豊富である。アジ、サバ、サンマ、カマス、ホッケ、金目鯛…。種類によって定食の値段は少し変わる。ご飯は量もたっぷり。焼き魚定食には味噌汁、生玉子がつく。

 カレーはお母さんが作った家庭のカレーだ。辛くはない。しかし、朝から激辛カレーを食べなくともいいのではないか。茹で玉子付きのカレーとコーヒーで目を覚まし、エネルギーを補給する。そして、バリバリ働けばいい。

 
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野地秩嘉 1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。出版社勤務、美術プロデューサーなど を経て、ノンフィクション作家に。食や美術、海外文化の評論、人物ルポルタージュ など幅広く執筆。近著に、「TOKYOオリンピック物語」「イベリコ豚を買いに」「打 ち合わせの天才」「アジア古寺巡礼」「アジアで働く いまはその時だ」など。


「幸せ食堂」繁盛記

この連載は、味がよく、サービスも悪くなく、値段はリーズナブルで、しかも、できればハイサワーやホッピーを置いている店のグルメガイドだ。ここで紹介される店は、金持ちの社長やグルメ評論家はまずいない。著者は、そういう店を「勤労食堂」「国民酒場」と呼ぶ。そこでは客が微笑しながら食べている。ほほえみながら食べている人と一緒にいることは至福だ。人生の幸せは勤労食堂もしくは国民酒場にある。

「「幸せ食堂」繁盛記」

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