ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

日本製ラーメンをイスラム教徒に爆買いさせた心理

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第47回】 2016年4月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

日本が大好きなマレーシア人が
食べたくても食べられないラーメン

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

イスラム教徒の多いマレーシア人が喜ぶハラール対応ラーメンは、値段が高く、大ヒットにはなっていなかった。しかし、ひょんなことから爆売れした理由とは...(写真はイメージです)

 「グローバル化」が叫ばれて久しいが、多くの日本人にとって、グローバル化は「(アメリカ文化を中心とする)世界的スタンダードでビジネスを展開する」というイメージではないかと推察される。

 しかしながらその半面、グローバル化とは日本の文化を他国に輸出するチャンスでもある。政府が推し進めているクールジャパンも、内容の是非はともかく、後者の視点からの戦略だと筆者は理解している。

 日本文化の輸出という点からとりわけ取り上げられるのは、アニメコンテンツだ。日本のアニメ輸出のピークは1990年代であり、今は下り坂だという意見もあるが、重要なのは「根付き度」であると筆者は考えている。つまり、日本のアニメコンテンツマーケットが、いかに持続するかだ。

 その意味では、筆者の住むマレーシアは成功例と言えるだろう。マハティール元首相の「ルックイースト政策」によって、日本の知名度や人気度は昔から高い。そのため、日本のアニメコンテンツも以前から輸入されており、現在の20代、30代のマレーシア人は、みなドラえもん(しかも、大山のぶ代時代の)、ウルトラマン、セーラームーンを当たり前に観ており、子どものころの思い出話として頻繁に会話に登場する。クレヨンしんちゃんや妖怪ウォッチもマレー語で放送されている。日本のアニメはマレーシアにおいて市民権を得ており、しっかり根付いているといっていいだろう。

 先日、自宅近くのショッピングモールで、日本のアニマックスが主催するイベント「アニマックス・カーニバル」が開催された。日本で人気のアニソンシンガーによるライブやコスプレコンテストなどが行われ、3万人にも及ぶ来場者で大いに盛り上がった。

 来場者の大半は学生や若い社会人で、筆者の勤める大学の学生も多かったという。筆者自身も、ゼミでこのイベントについて紹介したところ、学生のレスポンスのテンションが異様に高くて驚いてしまった。

 イベント自体は毎年行われており、今年で5回目である。例年通り成功裏に終了した。

 だが、筆者がここで紹介したいのは、この会場で意外な「大成功」をおさめた、あるブースの商品についてである。

味はもちろん、パッケージも日本文化好きの心に訴えるものがある(画像は「侍ラーメン」のホームページより)

 2日間にわたる本イベントでは、アニメ関連グッズを扱う店が出店されていたが、その横で異彩を放っていた小さなブースがあった。売っているのはラーメン。「侍」の黒文字が金色の箱に大きく描かれている(写真参照)。この半年ほど、イスラム圏でじわじわと人気が出てきたラーメン、『侍ラーメン』だ。鹿児島にあるラジーゼン国際食文化研究所が開発した「完全アニマルフリー」のラーメンである。

 アニマルフリーのため、菜食主義者(ベジタリアン)、イスラム教徒、ヒンドゥ教徒など、宗教的に食の制限がある人にも安心して食べてもらえる。筆者も食べたことがあるが、担々麺風スープは旨味があり濃厚で、とてもアニマルフリーとは思えない美味しさだ。麺も良い。日本が世界に誇るB級グルメのラーメンとして、その名に恥じない出来栄えだと思った。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧