中米コスタリカで国家計画・経済開発大臣を務めたローラ・アルファーロ教授は、「マジンガーZ」と日本車をこよなく愛す親日家だ。日本の経済成長モデルやインフラ技術はどのようにラテンアメリカの国々に役立っているのか。『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)にも登場したローラ・アルファーロ教授のインタビューを紹介する。(聞き手/佐藤智恵 インタビュー〈電話〉は2015年11月5日)

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なぜコスタリカ出身の教授が日本を研究するのか

ローラ・アルファーロ Laura Alfaro
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理(国際経済)。中米コスタリカ出身。現在、ハーバードビジネススクールとハーバードケネディスクールの ジョイント講座「競争力のミクロ経済学:企業、クラスター、経済開発」を教えている。国際経済の分野では、特に国際資本移動、外国直接投資、ソブリン債を 専門に研究。2008年、世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出。2010年から2012年までコスタリカの国家計画・経済開発大臣を 務めた。日本の金融政策についても数多くの教材を執筆。主な執筆ケースに“Japan's Missing Arrow?"(Harvard Business School Case 715-050, April 2015. Revised May 2015.), “Kinyuseisaku: Monetary Policy in Japan (A)”(Harvard Business School Case 708-017, January 2008. Revised April 2009.)がある。

佐藤 アルファーロ教授は中央アメリカのコスタリカ出身、という珍しい経歴です。ハーバードビジネススクールにコスタリカ出身の教員は、2人しかいないそうですね。なぜ日本について研究しようと思ったのでしょうか。

アルファーロ 私はもともと日本のことが大好きなのです。私の年代のコスタリカ人は皆、「マジンガーZ」を観て育ったのです。コスタリカ人に「子どものころ、大好きだったアニメは?」と聞いてみてください。おそらく、ほとんどの人が「マジンガーZ!」と答えるはずです。皆、カブト・コージに熱狂したのです。なぜだかわからないのですが、1970年代、1980年代、コスタリカでは日本のアニメ番組がスペイン語で数多く放送され、人気を集めていました。

 それから、私は日本車も好きです。ずっと日本車に乗っています。面白いことに、隣国のパナマはアメリカ車ばかりなのです。パナマ運河があるため、歴史的にアメリカの直接的影響下にあった時代が長かったからです。ところがコスタリカではトヨタ、ダットサン(日産)、ホンダなどどこを見ても日本車ばかりです。

佐藤 2010年から2012年までコスタリカの国家計画・経済開発大臣を務めました。大臣でいらっしゃったとき、日本の金融政策について研究した成果を国のために役立てる機会はありましたか。

アルファーロ コスタリカは歴史的にインフレに苦しんできた国ですが、私が大臣を務めていたときは、2008年に起こった金融危機の影響で、全体的に物価が下落し、歳入が減っていました。そのため、金融政策よりも、財政政策のほうが重要だということとなり、まず財政再建法案を議会に提出したのです。

 ただ、私は国家計画・経済開発大臣として、ことあるごとに「私たちはもっと日本から学ばなくてはならない」と国民に伝えてきました。特に私が学ばなくてはと思ったのが日本のインフラ技術です。コスタリカは日本と同じく、地震国ですから、インフラの整備は急務なのです。日本政府は、今も、有償、無償にかかわらず、下水処理施設の建設、発電所の建設などを支援してくれています。