来る4月24日、町村信孝氏が昨年6月に死去したことに伴う北海道5区の補欠選挙と、育休宣言後に不倫が発覚した宮崎謙介議員が辞職したことに伴う京都3区の補欠選挙が行われる。両補欠選挙は、安保法制の成立や民進党結成から初めての国政選挙であり、安倍晋三政権の今後を占う試金石として注目度が高い。この補欠選挙が国政に与えるインパクトについて政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に解説してもらった。
念願の憲法改正のためには、この夏の参院選で
絶対に3分の2を取らなければならない安倍自民
「4月24日の補欠選挙が重要なのは、安倍さんの今後、つまり夏の参院選でダブル選挙をやるかどうかと、消費税の凍結をやるかどうか、という2点が決まってくるからです。
どういうことかというと、自民党総裁の任期は3年2期までと決まっていて、安倍さんの場合、2018年9月まで。あと2年半ぐらいですが、この間に安倍さんは念願である憲法改正を実現したいと考えています。そのためには、憲法改正を発議する要件である衆参3分の2以上の賛成が必要です。
衆議院は、すでに自民党と公明党の与党で3分の2以上を確保しています。しかし、参議院は自公と、憲法改正に前向きなおおさか維新を足しても3分の2以上にはなりません。
そして、安倍さんの任期中の参院選は、この夏が最後となります。ですから、安倍さんは今度の参院選で是が非でも3分の2を取らないといけません」
では、どうしたら安倍首相は夏の参院選で3分の2を獲得できるだろうか。鈴木氏は、衆参ダブル選挙が一つの鍵になると指摘する。
「その手段として有力なのが、衆院選と参院選を同じ日に行う衆参ダブル選挙なのです。ダブル選挙は与党に有利だと言われ、過去、大平内閣の1980年と中曽根内閣の86年の2回だけ行われていて、いずれも与党自民党が大勝しています。
ダブル選挙の場合、衆院選の選挙区と比例、参院選の選挙区と比例と投票方式が4つに分かれ複雑になるため、野党間で選挙協力がうまくゆかず、与党が勝利しやすい傾向があるのです」
そして安倍首相が、衆院選で3分の2を取るためのもう1つの秘策は、消費増税の凍結だという。
「もともと消費税は、2015年10月に10%に引き上がる予定でした。ところが、安倍さんは14年11月、消費増税の時期を17年4月に延期することを決めた上で衆院を解散しました。一部報道によれば、安倍さんは増税見送りの方針を固め、5月の伊勢志摩サミットの前後に正式に表明するとみられています。そして前回同様、その是非を問うという建前で衆議院の解散に踏み切る可能性があります。増税というのは、国民にとってみれば嬉しい話ではなく、増税を凍結するということになれば当然、選挙で有利になります」