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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第7回】 2016年4月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1杯1000円のコーヒーは「何で」できているか?
ファイナンス的思考としてのキャッシュフロー・アプローチ

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サザンオールスターズ、Perfumeやポルノグラフィティ、星野源といった多くの有名アーティストを抱える大手芸能プロダクション「アミューズ」の株価が2015年9月末に大幅下落したことがある。この事象は、会計的には説明がつかないが、ファイナンス的な視点を持っていれば容易に説明がつくという。このとき、いったい何が起きていたのか?

年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

芸能事務所の株価が急落した理由

前回はバランスシートに基づいた会計的な思考が必ず見落とす「無形資産」にファイナンス的な思考が注目するということを確認した。

そして何よりも、すべての企業にとって決定的に重要な無形資産がある。

それはヒトだ。企業活動の源泉は、やはり従業員なのである。

しかし、驚くべきことに会計上のバランスシートには、従業員は資産として計上されない。たとえば、ある会社を解散すれば、清算価値分の現金1億円が手に入るかもしれない。しかしその背後では、その会社に蓄積されていた、有益なノウハウや強固な人的ネットワークといった膨大な無形資産が散逸している。会社の破産によって失われる価値は、清算価値の何倍、何十倍にも上るのだ。

この大きな損失を見落としかねないのが、お金中心で考える会計的思考の弱点だ。逆に、ファイナンスの強みは、こうした人的資本やブランドその他をひっくるめて、価値を考えることにある。

今回はこの論点について、少しだけ趣向を変えてお伝えしていくことにしよう。

アミューズという会社をご存知だろうか? 多くの有名アーティストを抱える、東証一部上場の大手芸能プロダクションである。有名どころで言えばサザンオールスターズ、もう少し若い世代向けで言えば、Perfumeやポルノグラフィティ、星野源といったミュージシャンが所属している。

同社のウェブページに行けば、アミューズのバランスシートは見ることができるが、どれだけ細かく見たところで、資産の部には特筆すべきものが何もないはずだ。

それもそのはず、この会社の価値を支えているのは、アミューズに所属しているアーティストやタレントといった「ヒト」だからだ。帳簿に載っている資産は、彼らを売り出すための小道具に過ぎない。

そんなアミューズの株価が、2015年9月末に大暴落した。
このとき、何が起こったのだろうか?

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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