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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第8回】 2016年5月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

なぜ「ヒト→モノ→カネ」の順なのか?
ファイナンス的な物事の考え方

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多くの人は「宝くじで3000万円が当たったらお金持ちになれる」と考えている。しかし、ファイナンス的な考え方に立てばわかりとおり、それは誤りである。本当の意味での「価値」をどう考えるべきか? いよいよファイナンス理論の根底にある発想に迫っていく。

年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

宝くじが当たっても
お金持ちにはなれない

前回確認したとおり、モノの価値はそれが生み出す将来のキャッシュフローの総和で決まる。これがファイナンスの最も基本的かつ重要な考え方だった。

ここで混同しないでほしいのは、価値を決めるのが「キャッシュ(現金)ではなく、キャッシュフロー(お金の流れ)」だという点である。

あなたは「お金持ち」と聞くと、どんな人を想像するだろうか? 人によってイメージはいろいろだが、いちばん一般的なのは「お金をたくさん持っている人」だろう。しかしファイナンス理論では、宝くじを当てて3000万円を所有しているだけの人をお金持ちとは呼ばない。なぜだろうか?

以前の連載でも語ったとおり、ファイナンスは現金を最も価値の低い資産に分類する。なぜなら、現金それ自体は、1円もキャッシュフローをもたらさないからだ。ファイナンスにおける価値はどこまでも「キャッシュフローを生む力があるかどうか」だ。

いくら3000枚の1万円札を神棚の前に置いておこうと、次の日に1枚増えていることはない。あるいは、利率0.03%の1年定期預金に入れても、1年後に9000円というバカバカしい利息がついてくるにすぎない。つまり、現金や預金にはキャッシュフローを生む力がほとんどないのである。もし2016年に導入されたマイナス金利が長引けば、利息どころか元本が減っていくことにもなりかねない。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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