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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第22回】 2016年5月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

「もらったお金」は借金より高くつく?
WACC(加重平均資本コスト)について学ぶ

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ある資産の価値を考えるとき、それが自己資金で購入されたものなのか、借金で購入されたものなのか、というのは重要な問題であるように思われる。しかし、それは本当だろうか? これを考えるために、話題のファイナンス理論入門書『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから、WACC(加重平均資本コスト)について紹介していこう。


「借金」――みんなの嫌われ者

人がお金持ちかどうかを判断するとき、僕たちが見るのは資産の大きさだけではない。1億円の高級マンションに住んでいる友人がいたとしても、彼が払ったのは頭金の500万円だけで、あとは銀行からの住宅ローン9500万円が残っているとしたら、あなたが感じるのは羨望よりも同情かもしれない。これから先、彼を待ち受けているのは、多額のローン・利子の返済だからだ。

逆に、「マイホームをすべて現金で買った」という友人がいたら、どう思うだろうか? 「抱えているローンはゼロ、高い利子も払わなくていい」となれば、誰もがうらやましく思うはずだ。そして、それまでコツコツとお金を貯めて、マイホームを一括購入した彼のことをちょっと尊敬するのではないか。

両者のバランスシートは下図のようになる。これまで僕たちは、どちらかというと、バランスシートの左側、つまり資産に注目してきた。しかし、持っている資産がどれほど大きくても、わずかしか自己資本(純資産)がなければ、この人をお金持ちと呼んだりはしないだろう。自己資本とは資産すべてを現金に換えて、負債すべてを返済したときに残る資産のことだ。

ある意味では、自己資本の大きさこそが、お金持ちの指標である。返済する義務のない自己資本がどれほど潤沢であるかが、家計や財務の健全性にとって、大きな目安となるのは間違いない。

大きな資産を持っていても、負債の割合があまりにも大きいと、自己資本がマイナスになってしまうことがある。これを債務超過という。

債務超過の代表格といえば日本だ。財務省が発表した日本国のバランスシートを見ると、資産は約680兆円に対し、負債は約1172兆円あり、492兆円の債務超過となっている(2015年3月31日時点)。国の債務問題で大変なことになっているギリシャのような国もあるため、日本の財政についてはつねに懸念の声がある。

企業経営の世界でも同じような考え方が共有されている。
実際、「あの会社は無借金経営だ」と聞くと、多くの人が「なんてすばらしい会社なんだ」と思うはずだ。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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