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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第11回】 2016年5月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

「ひとまず貯金」がいちばん損する

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「投資嫌い」の国民として知られる日本人。しかし、「ひとまず貯金」という投資スタイルの背後で、大きな損失が生まれていることにはほとんどの人が気づいていない。キャッシュや預金を重視する「現金至上主義」に隠されているワナとは?

年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

「貯金は損しない」は噴飯物

日本人は世界でもトップクラスの「投資嫌いの国民」として知られている。みなさんの中にも「元本割れが嫌だから、株式投資なんてやらない。ひとまず預金がいちばん」という人がかなりの割合を占めているのではないだろうか。

ここで確実に言えるのは「預金は損をしない」などという考え方は、ファイナンス的な観点から言えば噴飯物だということだ。

預金よりも投資効率のいいお金の遣い方は、いくらでも存在している。僕は何も「株を買え」と言っているわけではない。株のキャピタルゲインや配当金のような目に見える価値だけでなく、目に見えない価値を高める投資も無限に考えられるはずだ。預金というのは、そうしたチャンスをすべて切り捨てている意味で、「最も確実に損をする投資」だと言えるのである。

ある金融機関に勤務する営業マンからこんな話を聞いたことがある。

 「昨日、投資信託のセールスで、あるおばあさんの家に行ったんだ。彼女はこれまでずっと独身で、いまちょうど70歳。学校を卒業してから市の役場で勤め上げ、ずっと慎ましい生活を続けてきたので、なんと1億円を超える貯金がある。
これと言って趣味があるわけでもなく、日中はテレビを見てのんびりしているそうだ。年金をもらいながら、ちょっとずつ預金を切り崩して生活しているので、投資信託はいらないと断られたんだけど……」

僕は彼女の人生を否定するつもりはまったくないし、当然ながら投資信託の購入をみなさんに勧めようとも思っていない。ただ、思わず考えてしまったのは、「もしも彼女にファイナンスの知恵があったとすれば、自分の人生をどのように振り返るだろうか」ということだ。

ファイナンスは人生を変える劇薬になり得る。いままさにファイナンス理論を学びつつあるあなたも、どうか心していただきたい。今後の人生の選択が、今後大きく変わってしまうかもしれないからだ。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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