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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第24回】 2016年5月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

「マイホーム価値がローン残高を下回る」とヤバい?
MM理論・第一命題を見てみよう

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「マイホームの価値がローン残高よりを下回ってしまった」——これを債務超過と言って騒ぎ立てる人がいるが、ファイナンス的な観点からすれば、それは明らかなミスリードだ。ファイナンス入門書『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから、ノーベル賞を受賞したMM理論の考え方を紹介していこう。

ポケットを叩いても、
ビスケットは増えない

前回はMM理論(モディリアーニ・ミラー理論)の入門編をお送りした。が、この内容はMM理論のごく一部にすぎない。モディリアーニとミラーは1つの論文の中で3つの主張をしており、前回説明したのはその第1命題なのである。せっかくなので第1命題を少しだけ見てみよう。

第1命題:企業の市場価値はその資本構成から独立であり、そのクラスに見合った利益率ρkによってその期待利益を資本化することにより与えられる。

学術的な言い回しにひるまないでいただきたい。よく読めば、言われていることはきわめてシンプルだ。

とくに前半は前回見た内容である。企業価値が「その資本構成から独立」とは、その企業の資本がどれくらい負債から構成されているのか(どれくらい株主資本で調達しているのか)が、企業価値に影響しないということを意味している。これについて、ミラーはこんなたとえ話をしている。

 「いま、巨大なピザが4分割されているとしよう。あなたはそれぞれを半分にして8分割することはできる。ピースの数は増やすことができるが、ピザの大きさを変えることはできない」

すでに大きさの決まっているピザをどのように切り取って分けても、ピザ全体の大きさは変わらない。当たり前のことである。これと同じように、資本構成を変えたところで、企業の価値が変わるわけではないのだ。

後半の言い回しもやたらと難解だが、「そのクラスに見合った利益率ρk」というのは、要するにそのビジネスが抱えるリスクに見合ったリターンのこと。

企業に求められるリターン(金利)は、企業側からすれば一定のコストであり、それはWACC(加重平均資本コスト)として計算できることは、過去の連載ですでに見たとおりだ。つまり、「ρk」とはWACCのことだと考えればいい。

また、「期待収益」とは将来のキャッシュフロー、「資本化」とは将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて正味現在価値(NPV)を出すことにほかならない。

それゆえ、企業や資産の価値を決定する要素は、将来のキャッシュフローと割引率(WACC)の2つだけだというわけだ。見てのとおり、ここには負債とか株主資本といった変数は出てこない。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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