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日本に巣食う「学歴病」の正体

労働市場で認められない「一流大卒業者」の深い劣等感

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第16回】 2016年4月26日
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一流大を卒業しても
労働市場で認められない人たち

同じ一流大を卒業しても、仕事で劣等感を抱く人とそうでない人の違いは、どこにあるのだろうか

 本連載は15回を超え、連載として折り返し地点を過ぎた。今回は、一流大学を卒業したにもかかわらず、社内外の労働市場で認められない人たちが抱え込む「学歴病」の原因について考えたい。こうした人たちの学歴病は症状が深刻であり、周囲の社員にも悪影響を与えることがある。その意味で、連載の折り返しにふさわしいテーマと判断した。

 筆者の観察では、現在の境遇に何らかの不満や負い目、劣等感などを持っていると思われる人たちは、学歴の話題に敏感に反応する傾向が強いように思う。とりわけ「過激」と思えるほどに反応するのが、次に挙げる2つのカテゴリに属する人たちである。

 カテゴリの1つは、一流の大学を卒業しながら、新卒や中途の採用試験で「一流」と言われる企業の内定を掴むことができなかった人たちである。いわば、社外の労働市場で認められなかった人たちだ。このタイプは、特に30代前半までの年代に多く見られる。

 もう1つのカテゴリは、一流大学を卒業し「一流」とは言えない会社に在籍しているものの、自分の属する会社を「そこそこの会社」「入社の難易度は高い」などと、事実をねじまげて誇張したりするなど、自らを言いくるめて生きている人たちである。このタイプには、30代後半以上で昇進・昇格のスピードが同世代の中で平均以下の人が多い。

 これら2つのカテゴリに属する人たちの事例は、筆者の周囲には数え切れないほどあるが、できるだけ広い視点で捉えて分析したい。

 そもそも一流大学出身者は、今の待遇、社会的な地位、収入などに満足している人であれば、学歴の話に敏感に反応することはほとんどない。これまでこの連載では多くの人を取材してきたが、その中から一例を挙げよう。

 通常の取材は、筆者がまず電話をして趣旨を伝え、交渉する。10人ほどに交渉して3~5人は承諾してくれる。ところがこの連載に関する取材は、通常の取材と比べて断われることが多い。主旨を話しても、10人のうち1~2人しか承諾してくれない。筆者の25年ほどに及ぶ取材経験から言って、成功する「確率」がここまで低い取材依頼は珍しい。

 最も多いのは、東大・京大出身者だ。たとえば昨秋、東大医学部を卒業した40~60代の3人の医師に取材を交渉し、断られた。いずれも、「(テーマに)関心がない」「あえて(取材に)応じるようなものではない」といった回答だった。わずか30秒ほどで電話を切られたこともある。数年前、それぞれの専門分野である「がん」「検死」などをテーマにした別の取材で依頼をしたときは、話が途切れることがなかったにもかかわらず、だ。

 京大の経済学部出身で、大手の海運会社の関連会社の社長をしていた、60代後半の男性からも断りを受けた。数年前に「日本企業のアジア進出」をテーマに取材依頼をしたときとは、違う態度の受け答えだった。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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