ついに、コカ・コーラの東西統合が秒読みとなった。4月26日、国内2大ボトラーであるコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストの両社は、統合交渉に入ったことを発表した。
統合が実現すれば、売上高約1兆円の巨大ボトラーが誕生することになる。
ところで、ここで言う「ボトラー」とは何か。まずは“原液ビジネス”と呼ばれるコカ・コーラグループのビジネスモデルを解説しよう。
グループの組織は、大きく原液を売る本体と、購入した原液で最終商品の製造・販売を行うボトラーに分かれる。
日本では米ザ・コカ・コーラカンパニーの子会社である日本コカ・コーラ(CCJC)が原液を販売。ボトラーは国内に6社あり、各社がエリアごとに販売権を与えられている。
今回、交渉に入ったのはグループ内で販売数量の51%を占めるイーストと同35%のウエスト。統合が実現すれば、シェアの86%を握る“事実上の”国内ボトラー1社体制が構築される。
かつて、コカ・コーラが日本に登場した1950年代は、主な販売先は個人商店で、エリアごとのきめ細やかな営業がコカ・コーラの“強み”だった。最大時は国内だけで17社のボトラーが存在していた。
しかし、小売りのチェーン化で本部発注が主流に。かつての強みが一転、工場や人員の重複が弱点となった。
規模の追求によるコスト削減を目的に、約15年前からボトラーの合従連衡が始まり、今回の東西統合はその“総仕上げ”に位置づけられる。
傀儡のイーストと優等生のウエスト
焦点は統合比率
統合が確実視されるイーストとウエストだが、実現までの道のりは平坦ではない。両社は企業文化が大きく異なる。
イーストは米国本社から約3割の資本を受け入れており、業界内では、本社の言いなりになった「傀儡ボトラー」(業界関係者)とやゆされる。一方、本国資本が少なく独立性を保っているウエストは「ボトラーの中では優等生」(同)と評され、管轄エリアでの販売シェアも高い。
傀儡のイーストか、優等生のウエストか——。今後は、時価総額(イースト約2700億円、ウエスト約3400億円)で拮抗する両社の統合比率に注目が集まることになろう。
その際に鍵を握るのは、ウエストの筆頭株主のリコーだ。現中期経営計画で資産整理を行うリコーは、保有する約15%のウエスト株を放出する可能性が高く、その行方次第で、どちらが統合の主導権を握るかが決まる。
もっとも、どちらが主導権を握ろうとも、現状のままではコカ・コーラグループが日本で厳しい戦いを強いられるのは必至だ。
商品製造のプロセスを2つに分ける原液ビジネスでは、本体とボトラーの間に利益配分の歪みが生じ、競合との価格競争に対抗できないからだ。
日本では2位のサントリー食品インターナショナルに猛追されているコカ・コーラ。ビジネスモデルという根本の部分を見直しなくして、王者の復活は難しい。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)