4月26日、コカ・コーラの国内2大ボトラー、コカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストが統合交渉に入った。「週刊ダイヤモンド」では、4月16日号第2特集『日本コカ・コーラの限界』で、今回の統合交渉の発表に先んじて、日本でコカ・コーラが直面している苦境をレポートした。なぜコカ・コーラは、東西統合に動くのか。特集の一部を切り出して、加筆のうえ、統合に動かざるを得ない日本コカ・コーラの現状を解説する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)
2015年10月24日、東京都港区にある六本木ヒルズの51階に、50人を超えるコカ・コーラグループ関係者たちが集結していた。
コカ・コーラ商品を全国チェーンの小売店に販売するコカ・コーラカスタマーマーケティング(CCCMC)の設立20周年記念パーティーが開催され、同社の幹部やOBらが出席していたのだ。
壇上からは祝いのあいさつと激励が続いた。しかし、マイクの届かない会場の片隅では、OB陣から現役幹部への叱咤が飛んでいた。
「このままだと近い将来、サントリーに抜かれるぞ」。それは大げさでも何でもなかった。
10年前、コカ・コーラは30%ほどの市場シェアを誇り、2位のサントリー食品インターナショナルを12ポイントも引き離していた。しかし、この10年でサントリーが猛追。15年のシェアはコカ・コーラの27%に対し、サントリー21%と、差は6ポイントまで縮まっている。
焦ったコカ・コーラは“禁断の果実”に手を出した。15年4月、セブン&アイ・ホールディングスとのプライベートブランド(PB)商品を発売したのだ。PBは一時的な販売増が見込める半面、カニバリゼーション(自社競合)を引き起こしかねず、「苦肉の策」(競合メーカー首脳)の趣が強い。
なぜ、コカ・コーラはここまで追い詰められたのか。理由は三つに集約される。
一つ目は、自動販売機ビジネスの衰退だ。定価で販売できる自販機チャネルは利益率の高い収益源。83万台もの自販機を持つことがコカ・コーラの強みだった。
しかし、コンビニエンスストアの出店攻勢や量販店での安売りの影響をもろに受け、自販機1台当たりの年間販売数量は減少。05年に1台当たり295ケースあったものが、14年には242ケースにまで低下している。
しかも、である。昨年春、26万台の自販機を持つJT(日本たばこ産業)子会社ジャパンビバレッジホールディングスをサントリーに奪われた。サントリーは自販機数を75万台まで増やし、もはや自販機台数はコカ・コーラの強みではなくなっている。
自販機ビジネスが苦しくとも、手売りチャネルで販売本数をカバーすればシェアは維持できるが、手売りも苦戦。「ロングセラーが多く、新商品のヒットが少ない」(小売業界関係者)からだ。
陳列棚の確保が勝敗を分ける店頭では、消費者の目を引く新商品が強さを発揮する。サントリーは「オランジーナ」(12年発売)や「伊右衛門 特茶」(同13年)など、ヒットの目安とされる1000万ケース規模の商品を生み出し、店頭を“ジャック”している。
コカ・コーラも15年10月発売の「いろはす もも」が善戦しているものの、店頭でサントリーと伍して戦うには、さらなる新商品のヒットが不可欠だ。ヒット商品の不作。これが二つ目の理由だ。