「中だるみ」の中高年社員が職場で増殖する背景には、人事部のキャリア開発に関する無策ぶりが見える

 会社員は自分の力量や実績、成果、今後の伸びしろなどを詳細に知らされないと、自分の本当の姿を知ることなく、勘違いしたままキャリアを積んでいくものだ。

 ところが、そんな会社員が30代後半以降の中高年になると、期待していたような職位やポジションに就くことができない。今は、そんな壁にぶつかる社員が増えている。その多くは、強い不満や劣等感を抱え込む。一定の学歴を持つ人は10代の頃の栄光に浸り、心のバランスを保とうとする。

 ここ数回、そんな「戦力外社員」を扱ってきた。今回は、「戦力外社員」になる人には20代前半ですでにその兆候が見られ、20代後半になると十分すぎるほどに「トラブルメーカー」「持て余し者」になっていくことについて考えたい。

 言い換えると、彼らは中高年になってから仕事への意欲がなくなり、成果や実績を残せない「中だるみ社員」になるわけではなく、もともと「厄介者」だった可能性があるのだ。本来は、会社は20~30代前半までにこうした人たちに対して痛烈に自らを思い知る機会を与え、勘違いをさせないようにすることが、中高年の「中だるみ社員」が生まれないようにするための方策ではないだろうか。


若い頃から厄介者だった?
成果・実績に乏しい「中だるみ社員」

 2014年の6~8月にかけて、筆者は雑誌の特集で「65歳定年」の記事を書いた。かつて定年は60歳の企業が多かったが、ここ十数年は雇用を延長し、65歳まで雇用を維持する企業が増えている。2010年前後から、その動きは加速度を増している。だが実際は、雇用延長と言いながらも、60歳以上の高齢社員を次々に辞めるように仕向けている企業もある。それらの動きを含めて、記事にしようというものだった。

 当時は取材を受けてもらおうと、大企業を中心に交渉した。当初の予想を超えるほどに難航した。30~40社の大企業にアプロ―チし、承諾してくれたのは4社だった。断りを受けた大きな理由の1つは、30代後半から60歳までのいわゆるミドル層への対策が不十分であり、「話せることがない」というものだった。ミドル層とは役員や管理職だけではなく、非管理職なども含む。断りを受けた30~40社の大企業の広報担当者や人事担当者の半数近くは、ミドル層の活性化が不十分であることを認めていた。

 平たく言えば、高い賃金を受け取りながら、それに見合う仕事をあまりしていない中高年社員が一定数いるということ。人事部として、その対策が十分にはできていないのだ。

 人事担当者の半数ほどが口にしていたのが、次のような言葉である。

「30代後半以降になると、中だるみになり、仕事への姿勢が悪くなる社員が増えてくる。期待されている働きができないし、成果や実績も乏しい。その人たちのねじを巻いて、定年まで走ってもらうために、ある試みをしている」