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日本に巣食う「学歴病」の正体

過去の栄光にすがる「中だるみ」中高年社員が減らない理由

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第18回】 2016年5月17日
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「中だるみ」の中高年社員が職場で増殖する背景には、人事部のキャリア開発に関する無策ぶりが見える

 会社員は自分の力量や実績、成果、今後の伸びしろなどを詳細に知らされないと、自分の本当の姿を知ることなく、勘違いしたままキャリアを積んでいくものだ。

 ところが、そんな会社員が30代後半以降の中高年になると、期待していたような職位やポジションに就くことができない。今は、そんな壁にぶつかる社員が増えている。その多くは、強い不満や劣等感を抱え込む。一定の学歴を持つ人は10代の頃の栄光に浸り、心のバランスを保とうとする。

 ここ数回、そんな「戦力外社員」を扱ってきた。今回は、「戦力外社員」になる人には20代前半ですでにその兆候が見られ、20代後半になると十分すぎるほどに「トラブルメーカー」「持て余し者」になっていくことについて考えたい。

 言い換えると、彼らは中高年になってから仕事への意欲がなくなり、成果や実績を残せない「中だるみ社員」になるわけではなく、もともと「厄介者」だった可能性があるのだ。本来は、会社は20~30代前半までにこうした人たちに対して痛烈に自らを思い知る機会を与え、勘違いをさせないようにすることが、中高年の「中だるみ社員」が生まれないようにするための方策ではないだろうか。


若い頃から厄介者だった?
成果・実績に乏しい「中だるみ社員」

 2014年の6~8月にかけて、筆者は雑誌の特集で「65歳定年」の記事を書いた。かつて定年は60歳の企業が多かったが、ここ十数年は雇用を延長し、65歳まで雇用を維持する企業が増えている。2010年前後から、その動きは加速度を増している。だが実際は、雇用延長と言いながらも、60歳以上の高齢社員を次々に辞めるように仕向けている企業もある。それらの動きを含めて、記事にしようというものだった。

 当時は取材を受けてもらおうと、大企業を中心に交渉した。当初の予想を超えるほどに難航した。30~40社の大企業にアプロ―チし、承諾してくれたのは4社だった。断りを受けた大きな理由の1つは、30代後半から60歳までのいわゆるミドル層への対策が不十分であり、「話せることがない」というものだった。ミドル層とは役員や管理職だけではなく、非管理職なども含む。断りを受けた30~40社の大企業の広報担当者や人事担当者の半数近くは、ミドル層の活性化が不十分であることを認めていた。

 平たく言えば、高い賃金を受け取りながら、それに見合う仕事をあまりしていない中高年社員が一定数いるということ。人事部として、その対策が十分にはできていないのだ。

 人事担当者の半数ほどが口にしていたのが、次のような言葉である。

 「30代後半以降になると、中だるみになり、仕事への姿勢が悪くなる社員が増えてくる。期待されている働きができないし、成果や実績も乏しい。その人たちのねじを巻いて、定年まで走ってもらうために、ある試みをしている」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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