獨協大学で筆者が担当する「金融資産運用論」の春学期試験で学生が最も多く選んだテーマは日本の投資教育だったが、答案を読んでいて意外な点が二つあった。
一つは、おカネ儲けを教育の対象にすることに抵抗感を示し、全員規模の投資教育を学校で行うことに反対を唱える意見が、大多数ではないにしてもかなりの数あったことだ。「おカネはタブー」という意識が、現在の若い世代にもあるのは意外だった。
日本では、おカネを儲ける方法として投資に興味を持たせるよりも、「正しくて損のないおカネの管理の方法」を教える、という方向から入るべきなのだろう。期待リターンよりも、リスクとコストを重点に置くことになるが、金融商品の評価を正しく教えるには好都合な面もある。地味でまじめな内容になるが、これはこれでいい。
答案を読んでもう一つ驚いたのは、投資教育の目的として、日本の経済を活性化させるために「貯蓄から、投資へ」の実現が大切だ、という意見が多数あったことだ。投資は、あくまでも自分のために行うべきものであり、経済全体のために国民の資産を投資に動員するという目的意識は不適切で、これは重要なポイントの一つだ。
過去20年を振り返るとわかるように、投資は好結果が出るときばかりではない。長期投資なら大丈夫と盲信させるのではなく、いやなときには投資しないのも選択肢だ、という教育が必要だ。否応なく生じる「自己責任」の現実に立ち向かうためにも、運用は自分のために行っているのだ、という割り切りがあるほうがいい。