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田中均の「世界を見る眼」

トランプ氏の日米安保に関する主張に反論する

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第55回】 2016年5月18日
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トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策
「暴論」が世論の趨勢となる恐れ

トランプ氏の極めて歯切れの良い主張と米国の利益を優先する姿勢は、一定の層から強い支持を受けている
Photo by Keiko Hitomi

 米国大統領選挙予備選挙において大方の予想を覆してトランプ氏が共和党候補者として指名確実となった。これはワシントンの既成政治家への強い不信を物語ると同時に、トランプ氏の極めて歯切れの良い主張、なかでも「アメリカ・ファースト」を掲げ米国の利益を何にもまして優先するという姿勢が支持を受けたと言える。

 しかし、これはあくまで共和党内の予備選挙キャンペーンであり、大統領選挙本選になれば主張をより穏健に且つ精緻にしない限り当選はおぼつかない、或いは大統領となれば専門家達が政策のアドバイスをするであろうし、結果的には極端な政策とはならないのかもしれない。

 ただ、トランプ氏の主張のうち、専門家の目から見ては「暴論」と思われることも、米国内世論の趨勢に沿ったものはその方向に大きな力が働くことはありうるのだろう。結果的に大統領に誰が選ばれても、世論の大きな流れは無視できないだろうし、米国の政策に反映されていく可能性がある。そのような主張の中で、早い段階できちんと反論をしておかないと流れが出来てしまう恐れがあるのは、日米同盟政策である。

 トランプ氏は時の推移と共に仔細の言い方は変えてきているが、3月26日のNYタイムズインタビューや5月4日のCNNインタビューなどで「米国には日本を守る義務はあっても日本には米国を守る義務はない、日本は米軍駐留経費を全額負担するべきである、それが嫌であれば米軍は撤退し、自分で自分を守るしかない、日本が核兵器の保有に至ったとしても米国にとって悪いことではないのかもしれない」という趣旨の発言を繰り返し行っている。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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