三菱自動車の軽自動車の燃費偽装問題に引き続き、今度は軽自動車の雄であるスズキによる燃費の不正測定が表面化した。これら事件は、自動車業界の苛烈な燃費競争という面のほか、軽自動車という“ガラパゴス商品”について、制度面でも技術面でも商業面でも、もはや限界点に達しつつあることを象徴している。(ジャーナリスト 井元康一郎)

風よけの投資をケチっていたスズキ
開き直りは許されない

鈴木修会長は会見で、風よけを設置するための投資を渋っていたことを明かした Photo:AP/AFLO

 5月18日、三菱自動車の相川哲郎社長と中尾龍吾副社長が軽自動車の燃費偽装についての責任を負う形で辞任する、と発表した。この記者会見は、国土交通省への報告書提出に合わせ、あらかじめスケジューリングされていたものだった。その同日午前中、なんと今度はスズキが燃費測定のカギを握る走行抵抗値の計測について不正があり、国交省に報告するという話が飛び込んできた。

 スズキは測定を行うテストコースが海沿いにあり、風が吹くために国の規定による測定が困難だったことを理由に上げ、走行抵抗値の意図的な改ざんはなかったとしている。が、法令違反は法令違反。走行抵抗値そのものを露骨に改ざんしたという、軽自動車を除く三菱車と問題は同じだ。

 鈴木修会長は会見で、風よけを設置するための投資を渋っていたことを明かした。走行抵抗値の計測を、保有するテストコースの質がそれぞれ違うメーカー各社の自主申告任せにし、何の監督もしていなかった行政の怠慢ぶりは非難されてしかるべきだが、システムがそうなっている以上、より良い値を取るためのテストコース、計測施設づくりも企業間競争だ。どうしても不正が生まれがちな“土壌”があるなかで、その最適な数値を得るための投資をケチりながら、数値的には大差がないと開き直ることは許されないだろう。

世界商品にはなり得ない
不自然な規格の軽自動車

 しかし、グローバルの連結では普通車の比率を増やしているものの国内単独では依然として軽自動車が圧倒多数を占めるスズキが、爪に火を灯すようなやりくりの中で国内の研究施設への投資を渋ったことは、心情的には同情の余地がなくもない。すでによく知られているように、外寸が全長3400×全幅1480mm以下、排気量が660cc以下という軽自動車は、すでに日本市場専用の“ガラパゴス商品”と化している。

 鈴木修氏は昨年、「新興国の中には道が狭いところがたくさんあり、そこでは日本の軽のサイズの適合性は高いんじゃないかなと思っている」と語っていた。

 その一方で、ライバルメーカーであるダイハツの幹部は、「不自然な規格に収められた軽自動車が世界商品にはなり得ないというのがビジネスを通じて得られた率直な感想。鈴木さんの発言は、大幅に上げられてもおかしくなかった軽乗用車の増税幅を1.5倍にとどめた行政の顔を立てたものではないか」と、軽自動車は基本的に日本でしかい生きていけない商品だとの見方を示す。