Hさんは現在起業して、自分でIT系のビジネスを行っていますが、40代の前半まで、大手の外資系企業のコンサルタントでした。30代後半くらいから、多忙な毎日の中で、やるべき仕事の多さと時間の足りなさのアンバランスに苦しんでいたと言います。そこで、自分の将来を見つめ直し、働く目的を明確にしようとしました。

 そこで役に立ったのが、いわゆる「PPM」(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)でした。ボストン・コンサルティング・グループが開発した、経営資産配分のフレームワークを左の図のように「自分にとっての重要性」と、「所要時間」に変えてみたのです。

 Hさんは、それを「LPM」(ライフ・ポートフォリオ・マネジメント)と呼んでいました。通常、PPMでは企業が持つ事業や商品を、市場における「成長率」と「占有率」の中でどう配分していくかを考えますが、時間も限られた資源なのだから人生に応用できるはずだと気づいたのは、何ともコンサルタントらしい発想です。

なぜあの人は優先順位に迷わないのか?<br />40代は人生全体で時間配分を考える

 成長率=「重要性」、占有率=「所要時間」としてポートフォリオを組み、そこに今抱えるタスクをすべて並べていきました。

 PPMでは、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」という四象限に分けて、花形はシェアが高く競争力のある経営資源、金のなる木は成熟期にある事業、問題児は成長期にあるがシェアが低いもの、負け犬は衰退期にある事業を指します。

 これを自分の人生に応用して、新しい技術習得は時間を多く取られるが、自分にとって重要度が高く決して譲れない「マスト(MUST)」、社内調整や会議は時間を取られるが、自分にとってはさほど重要ではないので、できるだけ減らしたい「レス(LESS)」、家族との時間は自分にとって重要な上に時間もかからないので、もっと増やしたい「モア(MORE)」、飲み会といった付き合いやSNSをやる時間はさほどかからないが自分にとって重要ではないので、できればやめたい「ダンプ(DUMP)※ゴミ捨て場」に分けます。

 そして、「マスト」と「モア」に振り分けたものに、今後はできるだけ時間を投入し、「レス」と「ダンプ」に振り分けられたものは、できるだけ減らすか捨てるように意識づけをしていくのです。

 時間がなくて迷ったときも、「マスト」は常に重要度が高いので、その時間を確保するとHさんは言います。また、時間はかかるのに自分にとって重要度が低い「レス」をいかに減らしていくか、そのための時間割をどうつくるかがコツのようです。

 このように自分の価値観にもとづいた優先順位づけを人生全般においてできれば、確かに根本的な時間配分を調整できるでしょう。

 後悔しない人生を送るには、一度崩れる40代の時間割をいかにチューニングし直すか、自らの価値観を見つめ直して、すべての土台となる時間の使い方をどう変えていくかが問われているのです。もう一度、時間という人生のOSを刷新できるかできないかが、まさに人生のターニングポイントといえるのです。

【ポイント】「LPM」で人生全体の優先順位を見直す

第5回に続く(6/3公開予定です)