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日本を元気にする経営学教室

真に企業体質を強化する
改善の継続から元気を生み出すための視点
慶應義塾大学ビジネス・スクール校長 河野 宏和

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第13回】 2010年9月6日
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 スピード化、IT化が進む中で、じっくりと腰をすえて改善活動に取り組むよりも、早期に成果を求められるケースが増えている。しかし、そうした姿勢では、真に企業の体質を強化していくことは困難である。改善活動は、地道に継続してこそ価値を生むことになる。しかし、改善の継続には様々な難しさが内在している。今回は、改善の継続から元気を生み出すための視点を考えてみたい。

地道な改善で
赤字から2桁の黒字へ

 少し古い話になるが1980年代半ば、長野県に拠点を持つ、ある中堅の電子部品メーカーでは、NC設備(数値プログラム制御付きの加工設備)、自動倉庫、自走搬送車を駆使した量産効果により、創業以来最高の売上高と営業利益を記録していた。

 しかし、プラザ合意直後の需要低迷により、売上が下落、営業損失となり、ボーナスの支払いにも困る事態となった。それまで、東京からいわゆるもみ手で融資の依頼に来ていた取引銀行は、掌を返したように、社長を毎週東京に呼びつけ、昼食も出さずに毎週の収支を報告させた。この後、さらにバブル崩壊でその対応に……となれば、よく耳にする失われた10年という話になるのだが、そのときこの社長は、同様の規模のメーカーを次々に訪ねて、自社の問題の原因を深く考えた。

 その中に、「これだ」と直観できるメーカーがあった。大規模な投資を極力抑え、製品在庫をゼロに近く保っていた。自分が苦心して調達した資金が、実は設備や在庫として工場の中で眠っていることに気づいた社長は、自動倉庫と自走搬送車を全て撤去し、NC設備も全て人手による設備に戻した。

 そして、徹底して生産リードタイムの短縮に取り組み、設備を内製する工房を作り、材料・仕掛り・製品の在庫を減らしていった。設備が小型・内製になることで、段取り時間が短くなり、小ロット生産が可能になる、という改善のサイクルを繰り返すことで、業界平均の半分以下という生産リードタイムを実現し、他社に流れていた注文を取り返して、シェアをトップレベルに回復させた。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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