地球温暖化対策の新手法として効果を発揮するか。
新日本製鐵は、海岸の海藻が減少する「磯焼け」を改善する海藻造成製品で、全国漁業協同組合連合会から安全認証を取得した。
認証を受けたのは、鉄鋼スラグと水を練り混ぜた人工石・ブロックと、鉄鋼スラグと腐植土を混ぜて袋詰めした海藻用肥料の2製品。
鉄鋼スラグとは、製鋼工程で生じる副産物のこと。鉄1トンを作るのに約400キログラムもの鉄鋼スラグが発生する。現在、ほぼ全量をセメント原料や道路の路盤材などに使用しているものの、建設需要は減少しており、新たな用途を模索していた。
こうしたなか、降ってわいたのが、海藻造成事業への活用だった。海藻類の育成には鉄分が重要な役割を果たす。従来は森林などの土中の鉄分が河川を通じて海へ流れ込んでいた。しかし、森林伐採やダム建設などで供給が減少。その結果、全国各地の海岸で磯焼けが起き、沿岸漁業に大打撃を与えている。
2004年に始めた海藻用肥料の実験では、肥料がない場合に比べ、コンブの繁茂状況は約220倍となった。こうした結果を受けて新日鉄では早期に、自治体や漁業組合などへの販売に乗り出す考えだ。人工石・ブロックはすでに販売を開始、「今後は年間数十万トンの販売を目指す」(中川雅夫・新日鉄スラグ・セメント事業推進部部長)という。
もっとも、海藻造成製品への期待値は、事業の成長性よりも、むしろ、二酸化炭素(CO2)の削減効果にあるようだ。
海藻はCO2を吸収する。過去30年間で消失した日本沿岸の藻場の約半分を再生すれば、CO2の削減効果は約700万トン、つまり、日本における温室効果ガスの年間排出量(約13億トン)の約0.5%が減ることになる。
鉄1トンを作るのに排出するCO2は約2トン。鉄鋼業界は、地球温暖化の“元凶”と見られがちだが、海藻造成製品が普及すれば、かなりのイメージアップ効果が期待できそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)