2012年2月に『政府は必ず嘘をつく』(角川新書)を出版し、今年4月にTPPとマイナンバーなどの話題を加筆した同書の『増補版』を上梓したジャーナリストの堤未果氏。さらに7月に、同シリーズの新刊『政府はもう嘘をつけない』(角川新書)を出版する。18歳にまで選挙権が拡大された参議院選挙を前に、政治との向き合い方、参加型民主主義の作り方について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 深澤 献)

──著書『政府は必ず嘘をつく』は東日本大震災と福島原発事故を受けてのものでした。まず、当初の問題意識について、改めて振り返ってください。

つつみ・みか
ジャーナリスト。東京生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。米国野村證券に勤務中、9.11同時多発テロに遭遇。以後、ジャーナリストとして執筆・講演活動を続けている。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(海鳴社)で日本ジャーナリスト会議黒田清新人賞、『ルポ・貧困大国アメリカ』(3部作・岩波新書)で日本エッセイストクラブ賞、新書大賞受賞、近著に『政府は必ず嘘をつく 増補版』(角川新書)など。

 東日本大震災が起きたとき、アメリカの友人から「気をつけて。これから日本で、大規模な情報の隠ぺい、操作、統制が起こるよ。旧ソ連やアメリカでそうだったように」と言われたんです。

 私自身、9.11を現場で体験していて、あの後、アメリカが全体主義に進んでいったのを実感していました。実際、歴史を調べると、大きな災害などの後には、言論統制が起こり、規制緩和や民営化、特区などの政策が採られ、人々が思考停止になるんです。9.11の後のアメリカがそうでしたし、日本でも3.11の後も情報の伏せられ方はひどかった。このように情報が隠されていくときこそ、その裏をどう読み解いていくかが重要だと感じました。

 歴史学者の故・ハワード・ジン教授はイラク戦争の当時、学生たちに繰り返しこう訴えました。「政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです」と。

 ニュースというものは「点」であって、点で見ていくだけでは決してわからないことがある。しかし20年や50年といった歴史を紐解くことによって、政府の嘘は見抜けるとジン教授は説いたのです。

 つまり「嘘を見抜く」というのは「嘘を暴く」という意味ではなく、自分で真実とそうでないものを取捨選択し、見分けられるようになろうという意味で、そういう力を若い人には持ってほしいと思ってあの本を書きました。

 東日本大震災の後に原発事故が起きたときの政府や世論のパターンは、歴史的に見ても日本だけが特別ではありません。これまで国民に嘘をつくのは自民党だけかと思っていたけれど、当時の与党だった民主党も情報を隠蔽したわけです。現代社会はビジネスの上に成り立っているものだから、政府も企業も嘘をついて隠蔽するし、科学者も買収されるし…ということがある。こうしたことは「あるんだ」ということを前提に、自分の頭で真実をつかみ、日本で生きていかなきゃならない。