医療従事者が子育て中のお母さんに投げる心ない言葉

――施設についてはよくわかりました。では、現在の母親たちは苦しいと言われますが、なぜそこまで彼女たちは追い込まれるのでしょうか。具体的にはどんなことがあるのでしょうか。

 たとえばですが、母乳育児をがんばっているけれど、子どもの体重の増え方が緩やかなお母さんが、医療センターで「子どもの成長を考えたら粉ミルクをあげなさい。粉ミルクをあげないのは虐待ですよ」「粉ミルクを上げないなんて母親失格だ」と厳しい言葉をかけられたりします。ずっと母乳だった赤ちゃんは哺乳瓶で飲めないケースもあるのですが、「おなかがすいているのに哺乳瓶でも飲まない赤ちゃんがいるわけない」と言われたり、赤ちゃんごとに飲むペースが違うのに「赤ちゃんの体重が増えすぎているから、授乳は必ず3時間以上あけなさい」と叱られたり……。

――お医者さんがそんなことを言うのですか?

 医者に限りませんが、本人は頑張っているのに、専門家と呼ばれる人々に価値観を押し付けられているお母さんが本当に多いのです。本当は医療従事者のほうが知識をたくさん持ち、選択肢をいくつか示してあげなくてはいけないのに、医療従事者のほうが彼女たちを追いこんでしまっています。

――アドバイスをもらいに行っているのに、かえって追い詰められてしまう。

 “子育て中の人への言葉がけ”というものがあるということを、単に知らないというのもあるのです。産後うつによってメンタルヘルスの治療薬を飲まないといけないお母さんが「授乳を続けてよいですか」と聞いた時、「すぐに授乳をやめなさい」と言う医師がいる。「母乳、母乳と言ってると子どもがばかになるよ!」と怒鳴った人もいるとか。でも、授乳をやめるということがどれほどお母さんの心に傷をつけるか想像できていないのです。ここでは、「薬を飲むのはいいけれど、○時間は空けてね」という選択肢を出すことで、母親の苦しさを和らげられるのに。

――医療従事者も変わらないといけませんね。

 はい。KOTOCLOでは医療従事者への啓蒙活動の一環として、子育てや母乳育児支援に必要な知識を習得するための講習会も開催しています。皮膚科だろうが歯科だろうが眼科だろうが、子育て中のお母さんが来ない病院なんてないんです。子育て中の女性に対してかける言葉と、30歳代の男性に対してかける言葉は違うということを知らないといけない。たとえば、KOTOCLOにはメンタルヘルスの専門医が講義することもありまして、精神科医でも授乳中の女性への治療については詳しくなく、講義を聞いて驚く人もいるんですよ。