高齢者ケアが継続的に行なわれる集合住宅

 米国が発祥のCCRC(Continuing Care Retirement Community)を米国東部海岸で見てきた。ボストン、その隣のケンブリッジ、そしてニューヨークの北のコネチカット州などで5つのCCRCを回った。

 CCRCとは、継続的なケアが成される共同住宅である。健康な時に移住し、介護や医療が必要になれば同一敷地内の別の建物に移り、継続的な生活サービスやケアを受け続けられる引退した高齢者のための集合住宅のことだ。

日本も参考にしたい米国の最新認知症ケア事情今回、筆者が視察に訪れたCCRC。共用スペースは懐かしい街並みを再現したアーケード付きの商店街になっている

 全米に約2000ヵ所あり、約75万人が入居していると言われる。日本では、首都圏の高齢者に対して、医療と介護の施設や在宅サービスが今後大幅に不足するため、地方への移住を政府が呼び掛け、その受け皿として日本版CCRC構想が浮上している。だが、本場のCCRCとはどのようなものか、あまり知られていない。そこで、この6月下旬から視察の旅に出た。

 心身の状態によって入居するCCRCの集合住宅はいくつかに分かれている。まず、最初に健康な時に入居する自立型住まいのIndependent Living(インデペンデント・リビング)。食事のほか、ジムやプールなど運動設備、絵画や工芸品作りのアトリエ、それに図書室、映画鑑賞室などが備わる。健康を維持しながら娯楽や文化を存分に楽しもうというアメリカ人の気質がよく表れている。

 次に、入浴や着替えなど生活支援が一部必要な人が暮らすのがAssisted Living(アシステッド・リビング)。杖や歩行器、あるいは車椅子を使って食堂に赴き、自分で食事はできるレベルの人たちが入居する。日本の要介護判定では、要支援者や要介護1と2ぐらいまでの軽度者だろう。

 そして、日常生活のほぼ全体に渡って介護が必要される状態の人が入居するのがNursing Home(ナーシングホーム、Skilled Nursing)。日本の特別養護老人ホームにあたる。要介護3以上の中重度者が対象となる。

 加えて、認知症の人たちだけが10数人で入居するMemory Support(メモリーサポート)が、Assisted Living やNursing Homeの建物内に独立したスペースで確保されている。

 これらの入居施設が以前はバラバラに、異なる事業者によって運営されていたが、1980年代からひとつの敷地の中に集めて、同じ事業者が手掛けるようになった。つまり、ケア(Care)が継続的に(Continuing)行われる集合住宅(Community)ということで、総称してCCRCと呼ばれる。