朝日新聞のスクープ

 9月21日の朝刊トップで『朝日新聞』は、郵便不正事件を巡る村木厚子氏の担当主任検事が、押収していた上村被告(事件当時、村木氏の部下)のフロッピーディスク(FD)にあったデータを改竄していたことを報じた。上村被告が偽造したとされる報告書の作成日付を元の日付から検察の主張と辻褄の合う日付に書き換えたという。

 記事によると、朝日新聞は「今夏」このFDの記録を確認したところ、特捜部が捜査報告書に記した最終更新日時と証明書の文書ファイルの最終的な更新日時が異なることが判明したのだという。大手情報セキュリティー会社の解析によると、上村被告が厚労省で使っていたパソコン以外のパソコンと専用ソフトを使って書き換えが行われた疑いがあるという。また、朝日新聞の取材に応じた検察関係者は「主任検事から今年2月ごろ、『村木から上村への指示が6月上旬との見立てに合うよう、インターネットから専用のソフトをダウンロードして最終更新日時を改ざんした』と聞いた」と述べたという。

 記事によると、一連の報道内容が事実なら、この証拠品変造は証拠隠滅罪の可能性があるという。検事側が証拠隠滅とはイメージが湧きにくいが、あり得ない話ではない。

 この記事は、文句なしのスクープであり、『朝日新聞』(署名は板橋洋佳記者)は讃えられていい。公権力を行使する側をチェックする報道を行うことは、幾つかの面で特別扱いされている、報道機関に対する社会的な期待にも応えている。

 ただ、もともとが日付を巡るニュースなので、日付にこだわると、朝日のこの記事のタイミングも微妙だ。判決が出て、大阪地検が控訴断念を決めた後が適切と見たのかも知れないが、たとえば民主党の代表選挙の前にこの問題が報じられていれば、同選挙の大きな争点が、小沢一郎候補の「政治とカネ」の問題、検察審査会の結論による起訴の可能性、であっただけに、選挙結果に大きな影響を与えていた可能性がある。朝日新聞は、「今夏」に材料を得ていたわけだから、微妙だ。また、同紙は、改ざんに関わった可能性の大きな村木氏を担当した主任検事を「主任検事(43)」と匿名で報じている。スクープの価値を損なうものではないが、検察にも気を遣った記事の書き方であるように読める。