石破首相が問題とされる発言をした前橋市の民間有志との意見交換会の様子 (首相官邸HPより)石破首相が問題とされる発言をした前橋市の民間有志との意見交換会の様子(首相官邸HPより)

「群馬発言」で大騒ぎするマスコミの
後頭部に突き刺さる特大ブーメラン

「地域や女性への差別にはあたらないのか」――。

 6月7日、石破茂首相に対して記者団からこんな質問が飛んだ。群馬県前橋市で参加した意見交換会で、「我々西日本の人間は、北関東って聞いただけで怖そう、群馬県って聞くと怖い人たくさんいそう」「女性強そうみたいな、引いちゃうところがある」などと発言したことに対して、ジャーナリストからの“コンプラチェック”が入った形だ。

 石破首相の釈明では「怖い人」は、多くの映画や演歌の舞台にもなった上州(群馬)の大親分・国定忠治のイメージからきている。確かに、民俗学者の長沢利明氏が「忠治の一代記を客観的に見れば、この親分はかなり粗暴で残忍な薄情者だったようにも思える」(西郊民族談話会)と述べているように「群馬人=コワモテ」のイメージを全国に広めた人物だ。

 また、「女性が強そう」に関しては、上州名物と言われる「かかあ天下と空っ風」に由来すると首相自ら説明した。これは明治時代に日本を支えた絹産業が、主に群馬の女性たちの力によって発展したことに端を発する。つまり、明治日本から「群馬女性=よく働く強い女性」というパブリックイメージが全国的に広がっていたので、それをなぞっただけで他意はないというのだ。

 さらに、石破首相はこの群馬イジり発言の真意を記者に問われて「来てみると違うよねってことが、たくさんある」と説明している。

 はじめていく土地などに呼ばれ、講演やセミナーなどをした経験のある人はわかると思うが、実は聴衆への“つかみ”で最もウケるのは天気の話題やワイドショーネタではなく“地元イジり”だ。つまり、石破首相からすれば、場を和ませるためにひと笑い欲しかっただけだというのである。

 ただ、そんな釈明を「そっかそっか、じゃ問題ないっすね」と素直に受け入れて、振り上げた拳をおろすほど“正義のジャーナリスト”のみなさんは甘くない。《【速報】石破総理「群馬と聞くと怖い人がたくさんいそう」と発言 その後「差別の意識は全くない」と釈明 》(TBS  NEWS DIG 6月7日)と、災害や事故が発生したかのようなテンションで報じたのである。