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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

英国の産業構造を知らずにEU離脱問題は語れない

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第72回】 2016年7月28日
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 イギリスのEU離脱問題を評価するには、イギリス経済についての正しい理解が必要だ。イギリスの経済構造は、日本のそれとは大きく違う。しかし、そのことが、日本では必ずしもよく知られていない。日本と同じような産業構造の国であると考えると、EU離脱問題を正しく理解することができない。

停滞しているイギリスの製造業
伸びているのは高度サービス業

図表1に見るように、イギリスにおいて、製造業は停滞している。伸びているのはサービス産業だ。

 就業者数で見ると、2015年9月において、総就業者数3374.4万人のうち、製造業は264.8万人であって、7.8%にすぎない(Summary of labour market statisticsによる)。

 これに対して、金融・保険業は114.8万人であり、3.4%を占める。不動産52.4万人を加えれば、5.0%になる。

 また、専門的・科学技術的活動というカテゴリーの就業者が291.1万人いるのが注目される。ウエイトは8.6%であり、製造業のそれを超える。しかも、年率4.5%ときわめて高い伸びを示している。

 つまり、イギリスの場合、経済を支え、成長をけん引しているのは、製造業ではなく、高度サービス業なのである。

◆図表1:イギリスの産業別の実質GDP

(注)2008年第1四半期=100
(資料)Office for National Statistics

 この点では、アメリカと似ている。そして、日本やヨーロッパ大陸諸国とはかなり状況が異なる。ドイツ、フランス、イタリアなどの大陸諸国では、製造業の比率はまだ高い。

 日本は大陸諸国と似た構造だ。就業構造を見ると、製造業は16.1%と、イギリスに比べてかなり高い(労働力調査のデータによる)。その半面で、金融保険業は2.5%にすぎない。学術研究、専門・技術サービス業の比率は、3.4%であり、製造業の5分の1程度だ。

 多くの人は、イギリスが日本と同じように製造業の比率が高い国だと考えがちである。しかし、実際にはかなり異質の産業構造を持っていることに注意が必要だ。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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