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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

ごく普通の在日中国人たちの“虫の眼”を通して
中国に伝わる等身大の日本と相互理解の曙光

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第23回】 2010年10月14日
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 夜、自宅に帰った。いつも通り、郵便受けからその日の夕刊や手紙などをとってマンションのエレベーターに乗り込む。そしてエレベーターの中でどんな郵便物があるかチェックする。その日の郵便物には一枚の紙が入っていた。クリーニング店からのメッセージだ。その日、仕上がる予定のワイシャツは襟の汚れが洗い落とせなかったため洗い直すことになり、納品日を一日遅らせてほしい、という内容だった。

 日本のサービスのよさとクリーニング店の職人気質に感心した。そして中国出張時に遭遇したことを思い起こした。

 上海の宿泊先のホテルで朝食をとっていると、見習いのウェートレスがコーヒーをこぼしてしまい、私のズボンがびしょ濡れになってしまった。当然、ホテル側はズボンを無料で洗濯すると謝ってくれた。その夜、ホテルのベッドの上に洗濯済みのズボンが置いてあった。一件落着だ、と思った。

 翌日、上海を離れて地方に行くので、荷造りしなければならない。その時、ズボンの半分はきれいになっているが、もう一本の脚には依然大きな染みが残っていることに気付いた。なぜそんなことになってしまうのか不思議に思った。結局染みが残ったままのズボンを日本に持ち帰り、クリーニング店に再び出した。

 たかが洗濯物である。ハイテクの技術などはそれほどないだろう。重要なのは客を満足させる心と意識だろう。機械や設備といったハードの面では日本に近づき、なかには日本のレベルを越えたところもあるだろう。しかし、顧客満足度やサービス精神といったソフトの面では、中国はまだまだ日本に学ばなければならない。ハード分野のことなら、一目ですぐにそのレベルや位置づけが分かるが、ソフト分野の話になると、生活者でないと分からないことが多い。

 日本に生活の基盤をもち、日中のこうした違いに気付いた中国人社会には、実体験をベースに中国に向けて発信している新華僑と呼ばれる人が結構いる。その意図はいうまでもなく、日本の進んだところを中国が学びとるべきだという主張にある。

 大阪に住む主婦の「唐辛子」さんもその一人である。インターネットの世界では、日本の社会情報などを伝えるブロガーとしてかなり知られている彼女が、最近中国で初めての著書を出版した。『唐辛子in日本――教育、飲食、男女について』(復旦大学出版社)だ。ブログにアップされていた文章をまとめたものである。それを読むと、まさに生活者の視点から日本の社会、教育、文化、飲食などの情報を、鮮度を落とさずに伝えている。小学生の娘さんをもっていることも彼女の日本社会を見るツールになっているようだ。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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