ドアを開けて笑みを浮かべる男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「日本は空気がきれい」「社会保障が充実して老後の心配は不要」――甘いうたい文句に誘われ、日本に移住する中国人が急増している。しかし、彼らを待ち受けるのは“理想郷”ではなく、同胞による搾取と競争の連鎖だった。中国人同士が騙し合い、蹴落とし合う……不動産詐欺から飲食店への嫌がらせまで、コミュニティ内部で繰り広げられる「食い合い」「だまし合い」の構造を、当事者の証言から明らかにする。(日中福祉プランニング代表 王 青)

中国人にとって「日本は理想郷」?待ち受ける現実は……

 ここ数年、日本に中国人が大幅に増えていることは、多くの人が実感しているだろう。法務省の統計によれば、その数は2023年時点で約82万人。外国人が日本で暮らすためには、留学、技能実習、就労など多様な在留資格があるが、近年特に目立つのが「経営・管理ビザ」という在留資格である。

 経営・管理ビザは、資本金500万円以上、日本国内の事務所の確保など一定の条件を満たせば、日本で会社設立と家族帯同が可能になる制度で、移住へのハードルが非常に低い。2023年6月末時点では、同ビザ保有者の半数以上が中国人となっている。

 このビザを巡って、中国のSNS「小紅書(RED)」や「微信(WeChat)」では日本移住を煽る広告が氾濫している。「空気がきれい」「治安がよい」「社会保障が充実、老後の心配は不要」「5年で永住権」といったうたい文句が並び、多くの中国人が「日本は理想郷」という幻想を抱いたまま来日する。

 しかし、彼らを待ち受けるのは言葉の壁、制度の違い、そして「同胞による搾取」という厳しい現実である。