最近日本で増えている「ガチ中華」店。背景にあるのは在日中国人の増加だが、こうしたガチ中華の店の経営者は、中国にいたときには飲食店の経験がなかった人も多いという。言葉も通じない異国の日本に移住し、未経験の「飲食店」という仕事にチャレンジするのはなぜなのか。大阪の繁盛店を二店取材し、生の声を聞いた。(日中福祉プランニング代表 王 青)
増加する在日中国人と「ガチ中華」ブーム
近年、日本では「ガチ中華」「ディープ中華」などと呼ばれる本格的な中国料理店が増加している。餃子や酢豚、麻婆豆腐といった日本人が好み、イメージする“中華料理”ではなく、実際に中国人が日常的に食べている料理を出す中国料理店のことだ。中国の各地方の家庭料理を出すことを売りにしている店も多い。主な客は在日中国人だが、本場の味を求める日本人客からも支持を集めている。
この現象の背景にあるのは、日本に移住する中国人が増えている、というシンプルな事実である。法務省の出入国在留管理庁の統計によると、2024年6月時点で在日中国人は約84万人おり、前年末から2万2000人増加。全在留外国人の約23.5%を占め、国籍別で最多となっている。
こうして、日本で移住してきた中国人の中間層は、何の仕事をするのか。東京で主に中国人向けのコンサル会社を経営する陳海波さん(仮名)によれば、近年来日した中国人の多くが「経営・管理」の在留資格を持ち、その主なビジネスは貿易、不動産仲介、民宿、飲食店などである。中でも飲食店が最も多いという。