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森達也 リアル共同幻想論

一日一杯の青汁だけで生きる人

森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]
【第38回】 2010年10月18日
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70年間、飲まず食わずで生きている男!?

 この10月、『不食の時代』というタイトルのドキュメンタリー映画が公開される。……と、書き始めながら気づいたことだけど、僕が今使っているワードの日本語変換システムは「ふしょく」と打っても「不食」と変換しない。「腐食」と「腐蝕」、「腐植」、「扶植」、そして「不織」がすべてだ。

 つまり「不食」という日本語はない。あるいはあったとしても、使われることはまずない。「扶植」や「不織」のほうが「不食」より一般的なのだ(ちなみに僕には「不織」の意味がわからない)。まあでも、考えればそれは当たり前。生きているかぎり不食はありえない。生命にとって代謝は不可欠だ。食物を摂取しない生きものなどいない。

 そう思いながらもネットで検索すれば(つくづく便利な時代になったと実感する)、インドの新聞記事を紹介するサイトに行き当たった。更新の日付は2010年の4月30日だ。以下に引用する。

「インドに70年もの間、何も食わず何も飲まないで生きていると主張する男性が現れ、医学関係者に衝撃を与えている。82歳の男性は現在、アーマダバード市内の病院に招かれ、防衛研究開発機構の研究員によって男性の身体状況について研究が進められている。

 このニュースは28日(現地時間)『Telegragh.co.uk』などが報じた。プララド・ジャニさん(82歳)はアーマダバードの北120キロメートルのアンバジで洞窟に住み、隠遁生活を送っているという。ジャニさんは70年間、飲まず食わずで今まで生きて来た。彼によると、8歳の時に女神様に祝福を受け、特殊な能力を授かったそうだ。彼は口の中から飲食せずに生きていける『万能薬』が出ていると語る。

 研究開始から6日を過ぎたが、その間ジャニさんは何も口にしていない。しかし、飢えに苦しむこともなく、脱水症状も起こしていない。研究者らはこの特殊な能力が科学的に解明されれば、戦場の兵士や災害被害者が危機の時に、生き延びる方法を発見できるかもしれないと期待している。また、関係者は「彼の主張が正しいのなら、医学は飛躍的に進歩するだろう」とも述べた。(後略)。」

 インドには他にも、ヒラ・ラタン・マネクなど、もう何年も前から水は飲むが固形物をいっさい摂っていないという人がいる。アメリカには少量のアボガドを週に1回食べるだけというジャック・デービスがいる。そういえば数年前にはネパールで10ヵ月以上何も食べずに瞑想する少年が現れて、仏陀の生まれ変わりなどと話題になった。

 いずれも共通する言葉は不食。ジャック・デービスの場合は少量のアボガドを食べるけれど、基礎代謝量を考えれば、ほとんど不食といっていいだろう。

 これらの情報についての率直な印象を書けば、まずは相当にうさんくさい。いやうさんくさいとか疑わしいなどのレベルではなく、どう考えてもありえない。

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森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]

1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。


森達也 リアル共同幻想論

テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!

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