射幸心をあおるとして、時に大きな社会的批判を受けるパチンコ。一方で、年末ともなれば、ほほ笑ましい風物詩のように長い購入の列が紹介される宝くじ。しばしば正反対のトーンで紹介される両者だが、実は、確率・統計理論でそのカラクリを解き明かすと、宝くじのぼったくり具合に驚く。
谷岡一郎・大阪商業大学学長は、ギャンブル社会学、社会調査論が専門だ。谷岡教授によると宝くじや競馬などの公営競走は「控除率」が高いという。控除率とは全賭け金に対する胴元、運営者の取り分、いわゆる“寺銭”のことだ。
宝くじの控除率は52.67%である。全売り上げから運営者である国が、まず52.67%を取り、残りを当選者で分け合うシステムだ。極めて賭ける側に不利なギャンブルなのである。
また競馬などの公営競走は控除率が25%、サッカーくじのTOTOは50%。公営ギャンブルは総じて控除率が高い。
谷岡教授は「国民には賭け事を禁止しておきながら、国が自ら胴元になって独占し、大きく控除している」と手厳しい。
宝くじの控除率は、単純に運営元がいくら抜いているかという数字だが、パチンコのようなギャンブルでは、控除率の計算は複雑になる。玉をいくらで借り、勝ったらいくつで景品に交換できるか。借りた玉だけでなく出玉を再投資した場合なども考慮する必要があるため、非常に複雑な計算になる。
薄利多売のパチンコ
当たらない宝くじ
谷岡教授の計算によると、パチンコの控除率は3%、丁半が5%と、意外に低い。パチンコでは1万円賭けるごとに300円減るというわけだ。「そんなばかな!? 自分はもっと負けている」と思う読者もいるだろう。その通り、300円というのはあくまで平均であって、「3%しか負けない」と誤解し大きな気持ちになってパチンコ店に向かうのは禁物だ。
ただし、宝くじや競馬などの公営ギャンブルの控除率がパチンコに比べると格段に高いことだけは事実なのだ。
さて、宝くじは胴元に半分以上を取られる、極めて理不尽なギャンブルだと理解した上で、次に気になるのが当選確率だ。
2012年のオータムジャンボ宝くじの場合、当選金額3億3000万円の1等賞は1000万に1枚だった。
つまり1000万分の1の確率だ。1年間で交通事故で死ぬ確率は0.0036%だから宝くじに当たるより、交通事故で死ぬ確率のほうが360倍も高い。
実際には宝くじは複数枚買ったり、前後賞もあったりで、当選確率は変わる。億単位の賞金が提示されれば、ついつい夢を見て手を出したくなるというのが人情だろうが、控除率の高さと当選確率の低さを知ると、途端に夢から覚めてしまいそうだ。
ちなみに、他のくじを見ると好きな数字を選べるロト6での1等当選確率はおよそ、609万分の1。当選金の額は当選者の数で変わるが、理論上の1等当選金額は約1億円になる。そして、13年4月から新たに始まる「ロト7」の当選確率は、約1029万分の1だ。当選確率が低くなる分、理論上の当選金額は約4億円と高い。