円陣を組む手元写真はイメージです Photo:PIXTA

「他人に迷惑をかけたくない」「依存するのはかっこ悪い」そんな思いから、人に頼ることを避けていないだろうか?心理学においてこの考えは最悪だ。「頼らない」ことはかっこいいのではなく、あなたを壊すからだ。実際、「助けを求める」ことを当たり前にした町では、自殺率が劇的に下がったという。自分の心身を守るうえで、本当に必要な姿勢とは?※本稿は、伊藤絵美『自分にやさしくする生き方』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

孤独だとじわじわ
心と体が蝕まれていく

 イギリスで2018年に「孤独担当大臣」が新設されたことが世界的に話題になりました。それは、孤独がさまざまな健康問題や社会問題を生み出し、人びとや社会の幸福を蝕んでいるという研究結果に基づき、孤独は国を挙げて取り組むべき社会問題である、という問題意識によって新設されました。

 日本でも、2021年に「孤独・孤立対策担当大臣」が新たに設けられました(2024年に廃止となりましたが、内閣府はその後も「孤独・孤立対策推進室」を設けて対策を続けています)。世界中で、孤独や孤立は放置してはならない社会問題であるとの認識が広まりつつあります。

 孤独や孤立に関する研究の一例を挙げましょう。他者や社会から支えられることを心理学では「ソーシャルサポート」と言います。ソーシャルサポートが多ければ人は孤独ではなく、ソーシャルサポートが少なければ人は孤独で、孤立しているということになります。

 1970年代以降のさまざまな研究から、ソーシャルサポートが少ないことが(つまり孤立していることが)、心身の健康面(うつ病、血圧、結核、アルコール依存、低出生体重など)に大きな悪影響を与えることが見出されています。