酔った男性写真はイメージです Photo:PIXTA

万引き癖、過食、アルコール依存、発達障害、宗教2世など、さまざまな分野の「当事者」として自助グループを立ち上げている文学研究者・横道誠。子どもの頃から抱える精神疾患の苦しみゆえに、つねに依存症(アディクション)とともに生きてきた彼は、専門医・松本俊彦との出会いを経て「希望の星」を見つけたという。本稿は横道 誠、松本俊彦共著『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』(太田出版)のうち、文学研究者である横道 誠の執筆パートの一部を抜粋・編集したものです。

酒、薬物、ギャンブルと違い
セックスは「依存症」認定されない

 マコト(編集部注/筆者である横道誠)はアディクト(依存症患者)です。アディクション(依存症、嗜癖)の最初は、小学校中学年でクレプトマニア(窃盗症)になったことからです。

 万引き行為って、最初は欲しい商品だからこそ盗んでいたはずなのですが、だんだんと万引き行為そのものに夢中になってしまって、欲しくないものまで盗むようになりました。4年か5年くらい続けたあと、ついに捕まってしまって、恥ずかしいと感じて治まりました。

 それからはやっていませんから、アディクションの程度としては浅かったのかもしれませんね。でも、この時代の窃盗行為はじぶんが初めて明確に「加害者」になった経験だったので、長年ひっそりと心に秘めたままでいました。自助グループの経験に依拠した本を出すようになっても、なかなか告白できないでいました。

 少し遅れてオナニーを覚えましたが、それこそサルのように病みつきになりました。いや、この言い方はサルに失礼ですね。サルがオナニーに病みつきかどうか、私には知識がありません。まあ、いずれにしても、空想上のサルのようなイメージで病みつきになって、20代の頃は性的な逸脱に耽りました。

 ですから私は「セックス依存症」に興味があります。いわゆるセックス依存症は、まだアディクションかどうか結論が出ていなくて、ICD-11(『国際疾病分類 第11版』)では「強迫的性行動症」と呼ばれていることを知っています。早くアディクションとして認知されると良いな、と私は思ってしまいます。

 酒や薬物だけでなく、ギャンブルがアディクションと認められているのだから、セックスだってそりゃあアディクションでしょうよ、と私は(しろうとだからかもしれませんが)思ってしまうんです。

大学に入ると教員たちから
酒を飲まされて依存症に

 ほかのアディクションとしては、過食ですね。摂食障害もアディクションの一種だとされていると聞いています。もともとは、好き嫌いが激しい自閉スペクトラム症児らしく、私も少食や拒食で悩んでいたのですが、教室で昼休みにまわりで掃除が始まっても、ひとり泣きながら嫌いな野菜を咀嚼している毎日が嫌になって、「今日からはなんでも食べる!」と決意しました。