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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

ディズニー映画を凌駕!ジョブズが作ったピクサーの「チーム力」

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第55回】 2016年8月3日
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毎年完成度の高い映画を作り続ける
米・ピクサーの凄味

 日本では学校が夏休みに入り、子ども向けのイベントが多くなる時期だ。映画館も、この時期に向けて子どもをターゲットとして作品をリリースする。中でも「ファインディング・ドリー」は、今年の目玉の一つである。

宮崎駿や高畑勲といった、突出した「スタープレイヤー」の活躍に支えられてきたスタジオジブリとは異なり、チーム力でヒット作を連発するのがピクサーの特徴。この優れた組織の礎を築いたのは、かのスティーブ・ジョブズだった Photo:Reuters/AFLO

 これは2003年に公開された、ピクサー作品の「ファインディング・ニモ」の続編にあたる。「ファインディング・ニモ」は、さらわれた息子を探してカクレクマノミの父親が大冒険をするという話だったが、その時に父親の相棒となったナンヨウハギのドリーが主人公になっているのが「ファインディング・ドリー」だ。

 前作と同じく、主人公が家族を探しに行く話になっているが、ドリーが探すのは生き別れになった両親である。ドリーは記憶力が極端に悪く、短期的な記憶はすぐに忘れてしまう。だが決して忘れない幼いころの両親の記憶を頼りに、ニモ親子とともに大冒険を繰り広げる。

 マレーシアは日本よりも夏休みが早く、一足早く公開していたため、筆者はすでに観た。家族サービスのつもりで、あまり気が進まないまま観に行ったのだが、良い意味で期待を大きく裏切られ、正直びっくりした。前作の「ファインディング・ニモ」よりも個人的にはずっと面白く、テーマも深いものとなっていたように思う。

 「ドリー」に限らず、ピクサーはその21年の作品歴のなかで、変わらずに「オリジナルストーリー」を「最新CG技術」を駆使して作り、そのほぼすべてが「傑作」といってもいい出来栄えを示している。少なくとも、映画代を支払う価値のあるものを作り続けているといえるだろう。

 これだけの長きにわたってクリエイティブな作品を作り続けるのは、並大抵のことではない。宮崎駿や高畑勲といった「個人」の才覚に委ねて作品を作ってきた日本のスタジオジブリは、彼らの高齢化とともに失速していった。

 こう見ると、21年間毎年オリジナルストーリーに基づいたCGアニメをリリースし、しかもヒットさせ続けるピクサーの凄さがわかるだろう。そして集団主義的文化を持つ日本のジブリよりも、個人主義的文化のアメリカにあるピクサーの方が、一個人に頼らず、集団で作品をクリエイトしているのは興味深い。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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