毎年完成度の高い映画を作り続ける
米・ピクサーの凄味

 日本では学校が夏休みに入り、子ども向けのイベントが多くなる時期だ。映画館も、この時期に向けて子どもをターゲットとして作品をリリースする。中でも「ファインディング・ドリー」は、今年の目玉の一つである。

宮崎駿や高畑勲といった、突出した「スタープレイヤー」の活躍に支えられてきたスタジオジブリとは異なり、チーム力でヒット作を連発するのがピクサーの特徴。この優れた組織の礎を築いたのは、かのスティーブ・ジョブズだった Photo:Reuters/AFLO

 これは2003年に公開された、ピクサー作品の「ファインディング・ニモ」の続編にあたる。「ファインディング・ニモ」は、さらわれた息子を探してカクレクマノミの父親が大冒険をするという話だったが、その時に父親の相棒となったナンヨウハギのドリーが主人公になっているのが「ファインディング・ドリー」だ。

 前作と同じく、主人公が家族を探しに行く話になっているが、ドリーが探すのは生き別れになった両親である。ドリーは記憶力が極端に悪く、短期的な記憶はすぐに忘れてしまう。だが決して忘れない幼いころの両親の記憶を頼りに、ニモ親子とともに大冒険を繰り広げる。

 マレーシアは日本よりも夏休みが早く、一足早く公開していたため、筆者はすでに観た。家族サービスのつもりで、あまり気が進まないまま観に行ったのだが、良い意味で期待を大きく裏切られ、正直びっくりした。前作の「ファインディング・ニモ」よりも個人的にはずっと面白く、テーマも深いものとなっていたように思う。

「ドリー」に限らず、ピクサーはその21年の作品歴のなかで、変わらずに「オリジナルストーリー」を「最新CG技術」を駆使して作り、そのほぼすべてが「傑作」といってもいい出来栄えを示している。少なくとも、映画代を支払う価値のあるものを作り続けているといえるだろう。

 これだけの長きにわたってクリエイティブな作品を作り続けるのは、並大抵のことではない。宮崎駿や高畑勲といった「個人」の才覚に委ねて作品を作ってきた日本のスタジオジブリは、彼らの高齢化とともに失速していった。

 こう見ると、21年間毎年オリジナルストーリーに基づいたCGアニメをリリースし、しかもヒットさせ続けるピクサーの凄さがわかるだろう。そして集団主義的文化を持つ日本のジブリよりも、個人主義的文化のアメリカにあるピクサーの方が、一個人に頼らず、集団で作品をクリエイトしているのは興味深い。