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ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一

ワコール伝説をともに築いた
2人の同級生

北 康利 [作家]
【第20回】 2016年8月24日
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運命を変えた八幡商業の同窓会

 平野商会の代理店を返上して、さてどうしたものか、これで売るものががくっと少なくなってしまった。まさに会社存亡の危機である。

 ところが、ことの経緯を神戸の中野ボタン店に話したところ、

 「塚本はん、ようやったがな! よっしゃ、売る商品がないんやったら、うちのを扱わせてあげまひょ」

 と胸をたたいてくれ、同店の扱う飾りハンカチなどの繊維雑貨でなんとか息をつくことが出来た。

 その後、ヘアークリップを京都のメーカーに試作させてみると、これが飛ぶように売れた。

 なんとか平野商会代理店返上の穴を埋めることができたが、さらに儲けるためには人手がいる。

 まずは身内でと考えるのが普通だが、幸一には残念ながら兄弟がいない。ところが一人、優秀なようで頼りない人物が手を上げた。父親の粂次郎である。昭和22年(1947年)で54歳になっていた。

 ところが戦後の彼は、以前の不摂生がたたって心臓の調子がよくなかった。そのため仕事と言っても、帳簿つけくらいしかやってもらえない。

 次に目をつけたのが義弟の木本寛治である。

 当時、八幡商業の学生部長をしていた彼を熱心に誘ったが、慎重な木本は、

 「いずれは行きます」

 と繰り返すだけで、なかなか首を縦に振らない。

 親戚なのに冷たいと思うかもしれないが、当時の和江商事の信用などないに等しい。一生を託して入社するのは難しかった。戦前、大阪の商社に勤めていた木本であればなおさらだ。

 そんな幸一に、リクルーティングの千載一遇のチャンスがやってきた。 

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北 康利 [作家]

きた・やすとし/昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ、東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。“100年経営の会”顧問。松下政経塾講師。著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』、『吉田茂ポピュリズムに背を向けて』(以上、講談社)、『陰徳を積む 銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『西郷隆盛命もいらず、名もいらず』(WAC)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)などがある。最新刊は『佐治敬三と開高健最強のふたり』(講談社)。


ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一

ブラジャー。この華やかな商品に一生を捧げた男がいた。戦後京都を代表するベンチャー企業「ワコール」を創業した塚本幸一である。インパール作戦の生き残りという壮絶な戦争体験を持つ彼は、いかにして女性用下着に出会い、その未開市場を開拓していったのか。ベンチャースピリット溢れるその豪快華麗な生涯を、いま最も注目される評伝作家・北康利が描きだす!

「ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一」

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