ベストセラー『もしドラ』(『もし高校野球のマネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)を入り口として、ドラッカーのマネジメント思想に学び、それを生かそうという動きが広まっています。
ドラッカーの言葉はシンプルです。ある意味で、当たり前のことをやろうと言います。ただし、問題が複雑に絡み合い、当たり前のことがなかなか実現できないのがこの世の中。それを解きほぐし、ズバリと指摘してくれます。
加えて、実用的・実践的です。こんなことまでアドバイスしてくれるのか、と驚くほど、具体的に手取り足取り教えてくれます。それだけではありません。『もしドラ』の主人公・川島みなみが涙したように、人の心を打ちます。それはおそらく、ドラッカーの根っこの問題意識と関係しているのでしょう。
現代では、あらゆる人たちが何らかの組織に属し、仕事をしている。しかし、そこで働く人々が生き生きとし、いい仕事をするような組織になっているかというと、そうではない。組織の運営のされ方、つまりはマネジメントによって、世の中はもっと良くなる――。ドラッカーは真にそれを願って、思考を重ねました。だからこそ、読者の心を打つのです。
本特集「みんなのドラッカー」では、そんなドラッカーの世界を、長年、氏の日本語版を出版してきた弊社ならではの材料を使って、紹介していきます。
「Part1 ドラッカー“最後の授業”」は、2005年3月21日、95歳のドラッカーがドラッカースクールで行なった最後の講義の内容を初公開します。
「Part2 今だからこそドラッカー&『もしドラ』」では、中学校の生徒会長からデパート店長まで、『もしドラ』を読んで目の前の難題を解決していった実例を追います。『もしドラ』の図解や自分でやってみる「活用シート」も付いています。
「Part3 学校・会社に広がるドラッカー」では、高校野球、中央大学陸上部、学習院大学アメリカンフットボール部、明治大学登山部などの大学スポーツ、メガネチェーン、ヘアサロン、糖尿病治療の現場などにおける活用のケースを紹介します。
「Part4 もっと!『もしドラ』&ドラッカー」では、NHKでアニメ化が決まったことを記念して、著者の岩崎夏海さんとNHKエンタープライズのアニメ事業部長が対談し、『もしドラ』の秘話、アニメ化の舞台裏を教えてくれます。また、みなみが教科書とした『マネジメント〔エッセンシャル版〕』とはどんな本か、『もしドラ』の次に読むならどんな本がいいか、を解説します。
「Part5 わたしのドラッカー」には、名だたる企業トップ、文化人9人が登場し、それぞれのドラッカーを語ります。
「Part6 ドラッカー名言集」では、日本のドラッカリアンへのアンケートで挙がった「名言トップ30」について、ドラッカーの世界を最もよく知る上田惇生氏が解説してくれます。
閉塞状況にある今の日本だからこそ、ドラッカーの言葉が必要とされています。ドラッカーとは、それぞれのドラッカーであり、「みんなのドラッカー」なのです。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)