もしゴジラが本当に東京湾から首都・東京に上陸して大暴れしたならば、わが国自衛隊はどう対処するのだろうか――。今、公開中の映画「シン・ゴジラ」(東宝系)は警察官、消防士、自衛官たちの職業本能をかき立てるものだという。ゴジラがわが国にやってきた場合の自衛隊のオペレーションとはいかなるものか。防衛省、陸海空の各幕僚監部、そして自衛隊の作戦をつかさどる統合幕僚監部に話を聞いてみた。(取材・文/フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
もしゴジラが東京を襲ったら
陸・海・空のどの部隊が最強か?
はたして自衛隊はゴジラに勝てるのか。実は、この問い自体が「防衛機密スレスレ」(元統合幕僚監部勤務・1佐)だ。というのも、国家の防衛はセンシティブな要素を孕んでいる。もし防衛省・自衛隊が、任務としてこうした検討を行っていたとなれば、われわれシロウトからは想像もつかない、大きな問題へと波及する恐れもあるのだ。なので、取材は困難を極めた。
まず防衛省に真っ正面から「自衛隊vsゴジラ」について聞いてみたところ、「架空の事柄について回答することは差し控えたい」と、にべもない返答がかえってきた。昨年から幾度となく食い下がったが、オフレコといえども、とうとう回答をもらえることはなかった。
だが本当に防衛省が「対ゴジラ戦」をまったく想定していないかといえば、そうではない。防衛省本省に勤務する事務官のひとりはこう明かす。「防衛大学校や幹部候補生学校では、『もしゴジラが東京に上陸して、サンシャイン60をなぎ倒そうとした場合』にどう対処するか、あくまでも雑談の一環としてではありますが、語られていると聞いたことがあります」。
さらに、こんな証言もある。53期生として防衛大学校国際関係学部に学んだ陸上の幹部自衛官は、「対ゴジラ戦について防大の授業で話題に出たことがある」と話し、防衛省や自衛隊による対ゴジラ戦の研究を暗に認めた。一般大学卒の幹部自衛官も、「幹部候補生学校の授業で話題に上った」という。
こうしたいくつもの証言を総合すると、防衛省・自衛隊による「対ゴジラ戦」検討は、もはや“公然の秘密”として行われているものなのかもしれない。
海上幕僚監部に聞いても、担当者は「オペレーションに関する事柄なので統幕(統合幕僚監部)に聞いてほしい」とその回答を頑なに拒むばかり。しかし、「もし、対ゴジラ戦が繰り広げられた場合、陸・海・空の各自衛隊ではどこがいちばん強いのか」と聞くと、即座に、「あくまでも自衛隊とは無関係の個人として発言します」と前置きし、語気を荒げて次のように語った。
「うち(海上自衛隊)がいちばん強いに決まっているではないですか?もし東京湾にゴジラが現れたならば、3時間もいただければ殲滅も駆除も可能です。最初にP-3C(哨戒任務を行う航空機)による偵察、それから潜水艦による魚雷攻撃、護衛艦による艦砲射撃を行い、世界最強の特殊部隊『特別警備隊(SBU:Special Boarding Unit)』が出動すれば、もう大丈夫です!」
しかしゴジラが放射能を含む火炎を口から放射した場合、いくら精鋭で知られる護衛艦隊といえども殲滅されるのではないか。これについて艦艇装備を専門とする3等海佐もまた、「個人として」と前置きし次のように回答した。
「ゴジラの放射火炎は10万度とも50万度ともいわれています。でも、わが海自の艦艇はそれにも十分耐えられます。その詳細は防衛機密ということでご理解いただきたい」