「調剤で貯まったポイントを使って介護用紙オムツを購入した」こんな話がすでに現実のものとして動き出している。これまで行なわれていなかったポイントカードを活用した調剤へのポイント付与が、徐々に拡大している。消費が低迷するなか、喚起の起爆剤として調剤事業を展開する小売業を中心に今後も導入が進むことは必至で、調剤と物販が連動したキャンペーンなど、本格的な顧客プロモーションとして広がりそうだ。

「調剤での支払金額に応じて、なぜポイントが付かないのか」かつてこんな疑問を持った方も多かったのではないか。逆に「調剤にポイントをつけるのは違法行為ではないか」との認識を持っていた方もいたかもしれない。

 調剤に対するポイント付与について、あらためて厚生労働省に確認すると、「そもそも調剤での医薬品代金の支払いに対するポイント付与について制限するものはない」(保険局医療課)という。通常小売業が店舗の利用客に対してポイントカードを発行し、購入金額に応じて付与する応分のポイントと同じ付与が可能だとしている。

 さらに、調剤での店頭での支払金額(健康保険による一部負担金)に限るものではなく、通常物販店舗で実施される2倍、3倍などのポイント付与についても制限するものはない。つまり、調剤事業そのものが、物販事業と同じ販売促進の仕組みの中でコントロール可能だということがあらためて確認されたわけだ。

 かつて地域によっては保健所の指導対象として、厳しい対応を迫られたという薬局の実例も全くなかったわけではない。しかし、今回の確認によって、ポイント付与による販売促進(処方せん獲得促進)そのものについて、何ら制限を受けるものではないことがあらためて示された。

 ただし、ここで必ず踏まえなければならないのは、利用客が店頭で支払う一部負担金については国民健康保険法72条に基づく厚生省令医療担当者規則において、調剤薬の支払いに関する一部負担金の減免は、これを認めていない。調剤を利用したことで貯まったポイントを、そのまま調剤での支払いに利用することはできないということだ。この点にはくれぐれも注意したい。

ビジネスチャンスか消耗戦の始まりか

 調剤ポイントの活用が大々的に可能であることが確認できたことで、小売業にとってはビジネスチャンスが格段に広がることになる。最も影響が大きいのは、調剤併設型ドラッグストアを展開する企業だ。

 すでに自社あるいは提携ポイントカードなどを発行し、物販と調剤を併設した店舗を多く抱えているところは、調剤薬局での処方せん獲得の大きな促進手段として活用でき、物販部門では処方せん金額に応じたポイント付与によって集客・販売促進につながることになる。ショッピングセンターなどで展開する調剤薬局についてもポイントカードさえ共通で使用できれば、同じ効果が見込めることになる。

 企業再編の点からみれば、小売業にとっては調剤薬局と組む理由がさらに明確になったと言える。処方せんを薬局に持ち込む生活者の行動心理が、接客対応やスムーズな薬の受け渡しなどの点から、ポイント獲得と商品購入での利用という経済観念へと移る可能性が非常に高いからだ。急な発熱などで診療を受けた後、調剤薬局で一時も早く薬を受け取り帰宅したい急性疾患患者などの場合は別として、慢性疾患患者などを中心にポイント付与が大きな行動変化を起こすことは間違いない。

 実は今回確認された内容は、調剤薬局の新たな再編の火種となる。また面分業を促す大きな材料ともなり得る。立地上の利便性が大きく左右してきた門前薬局から、処方せんが生活者の購買拠点に移動する明確な根拠ができたことになるのだ。


「ドラッグストアニュース」10月号 好評発売中!

調剤ポイント実質解禁<br />調剤併設ドラッグストアで動きが活発化

企業再編が進むドラッグストア業界。そのような激動の渦中、再編の受け皿を標榜する新たな企業が立ち上がりました。ココカラファインホールディングスとアライドハーツ・ホールディングスが経営統合し、10月1日にスタートした新生ココカラファインは、売上高3000億円、全国に1000店舗超を展開。業界を担う有力企業としてのポジション確立をめざします。第1特集は、ココカラファインの企業戦略を紹介し、ドラッグストア業界の方向性を占う注目の企業特集です。
第2特集は、日本の医療制度そのものに変革を促すジェネリック医薬品にスポットをあて、製薬企業の展開を紹介します。ルールが変わろうとしているヘルスケア&ビューティケアビジネスの動きを捉える「ドラッグストアニュース」、要チェックです!
購読のお申し込みはこちらから