「ギリギリの生活」さえ許されない生活保護引き下げの悪夢止まることを知らない勢いで進む生活保護基準の引き下げは、受給者から「ギリギリの生活」さえ奪い去りかねない。制度改悪の危険な現状とは?(写真はイメージです)

憲法改正と比べてあまりにも
たやすい生活保護制度の「改悪」

 2017年10月22日の衆議院総選挙は、自民党・公明党が3分の2を超える多数となった。世の中の注目は改憲に集中しているが、私が最も気になるのは生活保護制度の今後だ。

 国の最高法規である憲法は、容易に変更されてよいものではない。このため、変更にあたっては、非常に“面倒“な手続きが定められている。しかし、生活保護世帯それぞれに給付される金額である生活保護基準は、厚労大臣が決定する。運用や施行のあり方は、厚労省の通知・通達・規則類で定められる。憲法に比べると、あっけないほど簡単に変更できてしまうのだ。

 2013年以後、止まることを知らない勢いで進む生活保護基準の引き下げは、生存権を定めた日本国憲法第25条の「実質改憲」「解釈改憲」なのかもしれない。それでは今、生活保護基準と生活保護制度に、何が起ころうとしているのだろうか。

 今回は、社保審・生活保護基準部会同・生活困窮者自立支援及び生活保護部会の多岐にわたるトピックの中から、特に重大と思われるものを独断と偏見で厳選して紹介する。

 内容は以下の3点だ。

(1)「健康で文化的な最低限度」の生育や教育とは?
(2)一般低所得層の消費実態は、どのように参照されようとしているのか。
(3)医療扶助「適正化」のために医療費自費負担を導入してよいのか。

 その前に、2013年以後の生活保護費の削減を振り返っておきたい。

 2013年以降の生活保護基準削減は、私には「複数の子どもがいる生活保護世帯を狙い撃ちした」かのように見えてならない。下のグラフは、2013年1月に厚労省が公開した資料「生活保護制度の見直しについて」の5ページの表から作成した、都市部での生活保護費の生活費分の引き下げ幅を、世帯構成別に高いものから低いものへと並べたものだ。

◆2013年~2015年 生活扶助引き下げ率(都市部・%)