イマドキ職場のギャップ解消法
【第13回】 2010年2月8日 高城幸司 [株式会社セレブレイン 代表取締役社長]

「大卒には絶対負けない!」
なぜ高卒社員は大卒社員に闘争心むき出しなのか

 職場の同僚と世間話をしている時や飲み会などの機会があると、お互いの接点を探ろうと、

「ところで○○さんは、どこの大学御出身ですか」

と訊ねることってありますよね。そこで大学が同じだったりすると
「縁がありますね!」と盛り上がり、違っていても話のきっかけになるものです。ところが「私は高卒です」と答えが返ってきたら、どうですか?

 大卒社員と高卒社員はたとえ世代が近くても、お互いに壁をつくって距離ができてしまう――。そういった話をよく耳にします。しかし、そんな学生時代の経歴の違いだけで壁ができるものでしょうか?今回は大卒社員と高卒社員で生じるギャップについて、考えてみたいと思います。

高卒社員と大卒社員が
一緒に働く職場は少なくない

 最近の人材採用と言えば大卒、中途が中心ですが学歴不問で高卒の人材を採用している企業もない訳ではありません。確かに日本経済の低迷で高卒全体の就職内定率は68.1%(2010年1月現在)と同時期では下落幅が過去最大という厳しい状況でした。しかしながら、サービス、介護など慢性的に採用で苦労している業界の採用サイトには「高卒可」「学歴不問」の文字を幾つも見かけます。

 先日、取材した中古車販売の会社は昨年の新規採用で高卒・大卒が約半々の割合でした。

 「当社は人材を育成する場所を目指しています。ですから、仕事に対する前向きな姿勢が持てるなら学歴は不問です」

と人事部の方も学歴を重要視しないことを強調していました。ただし、高校生の採用は大学生に比べて手間がかかるようです。各高校の進路指導部を個別の窓口に募集して、職場見学を生徒に実施、そして選考開始・・・。この手間が高卒採用の障壁になっている気がしてなりません。

 さて、話題を戻します。ただし、いざ職場に配属された社員の立場からすると、会社が「学歴不問」といっても同僚に「大卒」「高卒」が混在しているのは事実であり、お互いの意識のギャップから様々な摩擦が起きているケースもあるようです。そのギャップを生む原因はどこにあるのでしょうか?

知らず知らずに出来てしまう
高卒・大卒社員の壁

 同じ大学の同僚がいると「つい」徒党を組んでしまう・・・。その結果、社内で学閥と呼ばれる同じ大学の派閥が出来て、

「うちの会社は○○大学閥だから、出身が違うので肩身が狭いよ」

と言った嘆きはたくさんの職場で見かける光景です。出身大学という学歴で人間関係に壁ができてしまうのです。

 同じように「大卒社員」と「高卒社員」の学歴の違いでも壁はできます。そして、壁があるから同じ学歴の同僚同士で徒党を組んで別行動するようになります。例えば、先日取材した交通広告の会社では高卒社員が全体の2割くらいを占めていますが、

《毎月、高卒社員だけ集まってランチ会を開催している》
《忘年会の2次会は大卒社員と高卒社員が別々の店に行く》

など、対立している訳でありませんが、集団行動が自然と別々になっていました。

 原因を1人の高卒社員に尋ねてみると

「特に理由はないけど、気が合う同士で集まっただけです」

と答えてくれました。決してお互いの悪口を言い合っているくらいの険悪な関係・・・といった様子は感じません。

 ただ、その答えに続けて、

「お互いの間に見えない壁を感じることはありますね」

ポツリと話した部分にお互いのギャップを感じました。そこで、具体的な日々の職場の話をもう少し詳しく聞くと、些細なことながら「高卒社員」と「大卒社員」の間での対立構図が見えてきました。

仕事に対する観点の違いが
ギャップを生む?

 高卒社員の1年目は18~19歳、大卒社員は22~23歳と4年の人生経験の違いがあります。ですから新入社員で比較すれば、「大人と子供」くらいに社会人としての印象が違うのも仕方ありません。例えば、プロ野球の新入団会見で《今後の抱負》などを発言する場面を思い出してください。大人っぽさを感じるのは、大卒選手の方が圧倒的に多いはすです。

 ただ、ここでギャップの問題となるのは「年齢」ではありません。「職場全体で高卒社員と大卒社員がいるときに生じるギャップ」がテーマです。私が取材したシステム開発会社で、高卒社員と大卒社員にお互いの印象を訊ねたところギャップの根底にあるものが見えてきました。その会社は大手企業の二次受けをしており、大卒7割 高卒3割の社員構成です。ランダムに聞いて出てきたお互いの印象を幾つかのキーワードでまとめると、次のようになりました。

◆大卒社員からみた高卒社員の印象
真面目、熱心、融通が利かない

◆高卒社員からみた大卒社員の印象
要領がいい、柔軟、適当に思える

 どうやらお互いのギャップは仕事に対する観点にあるようです。

価値観の違う人と触れ合った
経験を持つ大卒社員たち

 「大卒だから学力は高卒より優れている」

 これは大きな間違いです。一部の学生を除けば大学4年間は高校3年間よりも学ぶ時間は格段に少ないので、《学校で学んだ知識》の差は、実際それほど大きくありません。

 大学生活を経験した人は思い出してみてください。
「テスト以外で大学に行かなかった。後はサークルとバイト三昧」高校時代の方がよっぽど勉強に精を出したはずです。ですから、高卒社員と大卒社員が同じ職場でお互いにギャップを感じてしまうのは学力ではない別の原因があります。

 それは大卒社員が学生時代に学んだ「人間関係」です。大学時代は高校時代と比較して、生活環境が違う人と接する機会が増えます。

 私自身も東京で生まれ、高校時代はせいぜい関東圏に住む同世代のクラスの友人が自分にとっての“社会”でした。ところが、大学に入学し、全国各地からやってきた同期の友人と出会い、バイトやサークルでさらに様々なバックグラウンドの人に接することで

《自分と違う価値観の人なんてたくさんいる》

ことを学びました。私だけでなく、大卒の多くの方が大学時代に高校時代とは比較にならないくらいに人としての幅が広がっているはずです。(もちろん、広がらないまま卒業する学生もいますが…)

大卒社員への対抗意識をむき出しにする
高卒社員にどう対応すべきか

 つまり、こうした4年間の経験がない高卒社員の中には、「価値観の違う人に対して関心を持つ」ことにハードルを感じる人がおり、大卒社員との間にギャップが生じてしまっているようなのです。

 例えば、先ほどの中古車販売会社の社員によると、
「高卒社員の大卒社員に対する対抗意識がむき出しになる」
ということでした。高卒社員は大卒社員と同じ職場で仕事をすると対応意識が高まって、そこから摩擦が起きてしまうことがあるようです。

 実際、大卒社員と高卒社員が同じ営業部で仕事をする職場の人事担当者は、高卒社員から

「大卒社員に負けないように頑張ります」
「私は高卒なので結果を出さないといけないと思うので…」

といった大卒社員を煽る発言を頻繁に耳にするとのこと。結果として職場の人間関係に大きな壁が出来てしまっているそうです。

 こうした対抗意識は心に秘めてもおく分にはよいのですが、声にして繰り返してしまう、と人間関係に影響するものです。こうした対抗意識が行き過ぎると、高卒社員だけランチタイムで徒党を組んで、

「うちの上司は大卒社員が優遇されていないか?」

などとなじったり、誹謗中傷する関係になってしまう場合も考えられます。こうならないように高卒社員と大卒社員が良好な関係を築くにはどうしたらよいのでしょうか?

 先ほど書いたように大学生には《自由で闊達》に過ごせる4年間がありました。そんな時間が高卒社員になかったことを大卒社員が理解して慣用に接すること、そして、健全な意味で対向意識を受けて立つことも大切です。対抗意識は無視されると逆に高まるものです。

 あるいは、

「そこまで対抗意識持たずに、仲良くしようよ」

とたしなめられる、上から目線の発言は対抗意識を助長させることにもなりかねません。お互いの壁を取り除くために、真摯に仕事に向き合っていけば、ギャップは徐々に解消することでしょう。

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