10月11日の読売新聞(朝刊)に、面白い記事が載っていた。「東京・西新宿の書店で、異例のブックフェアが開かれている。一般になじみの薄い2012年版厚生労働白書をテーマとしたフェアで、この2週間で白書は昨年1年分を上回る部数が売れたそうだ」「今回の白書は、厚労省の20~30歳代の若手職員が斬新な感性を生かして執筆した。マイケル・サンデル教授の『正義論』を引用、各種制度の歴史も詳述し、『社会保障の教科書』との評価も受けている」。
筆者も、常時、生きた情報(数字・ファクト)の宝庫である各種白書を愛用しているが、では、つとに前評判の高い今年の厚生労働白書(以下「白書」と呼ぶ)を読んでみることにしよう。
国語ではなく
算数で考える
筆者は、常々、世の中のことは押し並べて「国語ではなく算数で、即ち、数字・ファクト・ロジックで考えなければ、何も分からない」と考えている。よく例にあげるのが、「大きな政府」の話であるが、国語で「大きい政府は税金をたくさん消費するのでけしからん」と言ってしまえば、議論はもうこれ以上先には進まないような気がする。
国語を算数に直して、例えば、大きい政府の1つの指標であるわが国の公務員の数は本当に多いのか、あるいは政府の大小と国際競争力との間には本当に相関関係があるのか等を、数字・ファクト・ロジックで丁寧に検証していかない限り、およそ、建設的な議論は行えないのではないか。
嬉しいことに、今年の白書には、数字・ファクト・ロジックを一目瞭然にさせる優れた図表が多く見られる。例えば、次ページの画像は社会保障支出と国民負担率の関係を図示したものであるが、社会保障と税の一体改革の必要性を、これ以上、雄弁に物語る図表はあるまい。