仕事と生活の調和を図る「ワークライフバランス」への関心の高まりや、不況の影響、節電意識の高まりなどから残業時間の削減を徹底する企業が増加している。しかし実際には、必要もないのにいつまでも会社に残り、無駄な残業を続けている社員も少なくない。こうした社員に対して、管理職はどう対処すれば無駄な残業を止めさせることができるのか。これまで多数の民間企業で残業削減やワークライフバランスに関するコンサルティングを行ってきた日本能率協会総合研究所の広田薫主幹研究員に話を聞き、無駄な残業をしている社員をタイプ分けし、それぞれの対処法を明らかにする。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
残業代がほしいだけ?だらだらネット?
今すぐ止めさせるべき4つの残業
――仕事に対する意識や方法を見直すため、残業規制や「ノー残業デー」などの取り組みをし、社員の無駄な働き方を改める企業が増加しています。しかし、未だに無駄な残業を続ける社員が非常に多いのも事実です。実際、どのような残業社員が職場にはびこっているのでしょうか。
日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部主幹研究員。1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。著書に『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)がある。
残業は、大きく「必ずすぐに止めさせなければならない残業」、「仕方ないと思わずに止めさせなければならない残業」、「仕事に対する考え方を変えないといけない残業」、「必ずしも悪いわけではない残業」の4種類に分けることができ、さらに詳細には合計9つのタイプが考えられます。
まず、「必ずすぐにやめさせなければならない残業」として挙げられるのが、「生活残業」「罰ゲーム残業」「付き合い残業」「ダラダラ残業」です。
「生活残業」とは、仕事があるわけではないのに、残業代がほしいために遅くまで働いていることで、これはすぐにでも止めさせなければなりません。
「罰ゲーム残業」は、成果を上げている人が遅くまで会社に残って働いているので、あまり成果を上げていない人が後ろめたさを感じて、特にやるべき仕事がないのに帰りづらくなるものです。残っていても仕方ありませんので、こうした人には、早く帰って自分は何をした方がいいのか、職場を離れて冷静に考えてもらった方がいいでしょう。
「付き合い残業」とは、上司・部下・同僚が残業していると帰りづらいため、ついつい付き合ってしまうものです。上司は部下が心配であるが故に遅くまで会社に残るケースも多いですが、逆にそれが部下の負担になっていることもあります。ですから、上司が部下をフォローする必要があるならフォローし、必要がなければ自ら率先して帰るようにしましょう。互いに声掛けをしながら慣れ合いや依存心を排除し、仲良く職場に留まる雰囲気を打破する必要があります。