財務省が10月22日に発表した貿易統計によると、2012年度上半期(4~9月)の貿易収支は3兆2190億円の赤字となった。これは、11年度の上半期に比べて9割の増加だ。半期ごとの額では、過去最大の赤字だった。
これによって、経常収支の黒字も縮小する。これまで巨額の経常収支黒字を記録してきた日本経済に、大きな変化が生じていることは間違いない。
しかし、これをめぐる議論の中には、誤りに陥っているものもある。その一つとして、国債消化との関連に関するものがある。それについて以下に述べよう。
外国からの借金で
国債を買うこともできる
「経常収支の黒字が縮小すると、国債消化が困難になる」との見方がある(注1)。この見解はかなり一般的であり、大新聞の記事にも見受けられる。
しかし、この見方は誤りだ。
誤りである第1の理由は、「経常収支黒字が縮小しても、資本収支の黒字(海外からの資金流入)が増えれば、国債の国内消化になんら問題はない」ということだ。
これは決して机上の空論ではない。事実アメリカは、2005年から07年まで、年間7000億ドルを超える巨額の経常収支赤字を記録してきた(図表1参照)。05、06年の経常赤字の対GDP比は、6%近くにもなった。それにもかかわらず、国債消化に格別の支障は生じなかったのである。