黒字から一転、大幅赤字へ転落
崖っぷちのパナソニック業績予想

 10月31日、パナソニックは2013年3月期の業績予想を、それまでの500億円の黒字から7650億円の赤字へと大幅な下方修正を行なった。これによって同社は、2期連続で7000億円を超える大幅な赤字を計上することになる。配当も63年ぶりに無配に落ち込む。わが国を代表する電機メーカーが、まさに崖っぷちに立たされているのである。

 株式市場は、この大幅下方修正を嫌気して一斉に売りを浴びせ、株価は年初来安値を幾度も繰り返す軟調な展開になった。同じ家電メーカーのシャープ、ソニーの業績も苦戦を強いられており、かつて世界市場を席巻した我が国の家電メーカーは、その威光を完全に失った格好だ。

 国内外の投資家からは、「日本の家電メーカーの業績低迷、株価下落は、現在の日本を象徴する存在になってしまった」との声が聞かれる。

 今回のパナソニックの大幅赤字の背景には、中国経済の減速などで家電製品の販売が伸び悩んでいることに加えて、過去の企業統合などに係る7000億円を越える“負の遺産”の後始末が大きなマイナス要因となっている。

 2013年3月期に“負の遺産”を償却することで、とりあえず後ろ向きの重荷を清算できるものの、今後の業績回復には稼げるビジネスモデルをつくることが必要になる。

 一方、アップルやサムスンは、スマートフォンやタブレットPCなどの売れ筋製品を武器に、日本の家電メーカーとは比べ物にならない収益を上げている。わが国の家電メーカーが軒並み大幅な赤字に落ち込む姿を見ると、まさに時の移り変わりの早さを感じる。

 力の強いものが生き残るのではなく、環境の変化に上手く対応できた種族だけが生き残る――。産業界でも激しい生存競争が続いていることを、思い知らされる。

 2013年3月期の決算予想を見ると、最初に思いつく言葉は“負の遺産”整理だ。具体的にパナソニックは、来年3月の決算で携帯電話、リチウム電池、太陽電池の3つの事業分野を中心に、合計で3000億円を上回る減損処理を実施する。これらは、同社が過去に行なった企業統合などで計上した“のれん代”の償却だ。